75 : side S ページ25
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Aは、人生で初めて俺を「可愛い」じゃなくて
「格好いい」と評価してくれた。
自分の方がよっぽど凄いのに、
今でも俺を「憧れ」と言ってくれる……大切な幼馴染。
「まじでだっせぇ事になるな…」
ぐるぐる思い詰めた中で自然と口をついた独り言は、幸いにも誰にも聞かれる事はなかった。
クリエイティブ審査本番前日の夜。
昨日から引き続き、時々口元に力を入れるという変な動きをするAが、もしかしたらアー写撮影の事を引きずって笑う練習をしようとしてるのかも知れない。と気付いてしまった瞬間から、俺の決心は固いものになりつつある。
「ミヅキってまじで練習しすぎでは?」
「………もう止められないのですよ。どうにかしてよソウタ」
「悪い事じゃないけどね。体力ブラックホール?」
「それを言うなら、ミヅキの場合は胃袋がブラックホール」
廊下からCチームの練習部屋を覗いてきたAチームの面々に、ショウタくんがげっそりとした顔で応えた。
午後の練習時間をほとんどぶっ通しで、明日の最終調整を行った今日。流石に少し休憩を…と自然な流れて壁に寄った男達を尻目に、Aだけが尚も鏡に向かっている。
脚にまあまあな怪我を負ったのに、昨日も普通な顔してランニングに行こうとしたAを流石に全力で止めた。とショウタくんがAチームの6人に話したところで、ソウタくんが「鬼じゃん。練習の鬼だ、あいつ」と溜息をついた。
でも、そんな様子でも、Aの姿には充分感化されたらしい。「もう少しやってくか」「俺も今同じこと思ってた」と、ソウタくんとレオくんの言葉を合図にして、6人は一斉に我先にと練習室に戻っていく。
そして、
「………俺たちもやりましょうか」
「ですね」
無駄に敬語になった俺達もまた然り。
ルイ、タイキ、レイちゃんもいつの間にか、誰に言われるでもなく立ち上がってAの周りに集まっていく。
「っしゃー、最後の追い込みかますぞ!」
「「「「おー!」」」」
「?!……おー!」
一足遅れて、皆に習うように腕を突き上げたAに、俺たちは笑い声をあげる。
A、やっぱりお前は皆の中心だ。
可愛げのない無表情でも、その心意気だけで人を集める力がある。
きっと、俺が知ってるAはまだそこにいるよね。
(ダサくったって何でもいい)
あの日のAを取り戻せるなら、
俺はその為に何だってする事が出来る。
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白(プロフ) - なあさん» こんにちは!たくさん読んでくださって嬉しいです(^^)今ちょうどブック3を準備中なので、今日の夜か明日には更新できるかと思いますので是非お待ちください♡なあさんもお身体お気を付けてください(๑˃̵ᴗ˂̵) (2022年3月21日 13時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあ(プロフ) - 何度も繰り返し読み返すほど、どのお話も好きです!これからのお話も楽しみにゆっくり待機します〜!最近、寒暖差が激しいのでお体に気をつけてくださいね! (2022年3月20日 23時) (レス) id: b86f0e9c1f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 雲さん» はじめまして、コメントありがとうございます(^^)夢主ちゃんショウタくん信者なので、つい出ちゃったんでしょうねー。笑 マナトくんほんとどんな空気にも合うので動かしやすく書きやすく、沢山出しちゃってます笑 これからもよろしくお願いします! (2022年3月17日 18時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
雲 - はじめまして、「ショウタくんを出せ」に爆笑して思わずコメントしました。マナティ推しですがめちゃくちゃ楽しく読ませていただいてます!シュント身内的な女の子にはこんなあしらいしてそうって想像出来るし、マナティ成分も高めで嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年3月17日 16時) (レス) @page39 id: 2da972bf1d (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - アキさん» はじめまして!自家発電笑いました(^^)楽しんでいただけて何よりですっ!シュントくん推しの自己満足満載ですが、これからもどうぞよろしくお願いします! (2022年3月15日 0時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2022年3月4日 17時