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普通のオーディションなら、俺達の現状はきっと格好のドラマ要素になる。日高さんはそんな事しないって、頭でわかってても、下手な事言いたくないと思ってしまう。
「……驚きました」
「そうだよね。でも普段の2人の様子見てたら、ミヅキはシュントには心開いてるんだろうなって感じるから、僕としてはそこは安心してる」
「………」
「はははっ、ごめんね。警戒するよね」
「あ、いや……すみません」
俺が余りに口数が少なくなったからか、苦笑を浮かべる日高さん。あまり否定もできなくて、思わず謝ってしまう。
「僕は、そうだな。……いつかミヅキの心からの感情が見てみたいと思っただけなんだ。表現力が天才的な子だから、音楽を通してでも充分と思う反面、ミヅキ自身をもっと知りたくて」
もちろん、シュントのこともね。……その口ぶりに少しだけ、警戒する気持ちが薄れていく。バラエティ要素にするつもりなら、もっと違うアプローチの仕方があっただろう。俺たちを追うカメラだったりスタッフが、もっと俺らの様子をしつこく撮ったりもしたんじゃないか。
でももちろん、今日に至るまでそんな事気になることもなかった。日高さんはただ純粋に、俺たちを1人の人間として、知りたいと思ってくれてるだけだ。
そんな事を考える俺とは裏腹に、日高さんは申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「でもいきなりこんな聞き方をするのは良くなかったね。ごめん」
「いえ、本当に。僕もなんも知らない状態なんで」
「どうかな。それを言うと、シュントはよくミヅキを見てると思うよ」
「え?」
「お互い様だけどね」
その言葉がどういう意味なのか、よく分からない。
その言い方だとまるで、俺もAもお互いがお互いを、周りから見ても分かるくらい意識してるような。そんな感じに聞こえるけど。
「ライバルであり相棒なんだろうね、シュントとミヅキは」
ああ、その言葉ならしっくりくる。と頷いた俺に「羨ましいよ」と続けた日高さん。CチームでAとまた同じチームに振り分けてくれた事を感謝したら、彼はなんと言うだろうか。
それじゃあ俺があまりにもAに気持ちが近いと思われそうで、口にはできず。
心の中で頭を下げるのと同時に、願わくばこのままいつまでも、俺の隣にAがいる……日高さんの下で一緒にデビューできる日がくればと考えずにはいられなかった。
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白(プロフ) - なあさん» こんにちは!たくさん読んでくださって嬉しいです(^^)今ちょうどブック3を準備中なので、今日の夜か明日には更新できるかと思いますので是非お待ちください♡なあさんもお身体お気を付けてください(๑˃̵ᴗ˂̵) (2022年3月21日 13時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあ(プロフ) - 何度も繰り返し読み返すほど、どのお話も好きです!これからのお話も楽しみにゆっくり待機します〜!最近、寒暖差が激しいのでお体に気をつけてくださいね! (2022年3月20日 23時) (レス) id: b86f0e9c1f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 雲さん» はじめまして、コメントありがとうございます(^^)夢主ちゃんショウタくん信者なので、つい出ちゃったんでしょうねー。笑 マナトくんほんとどんな空気にも合うので動かしやすく書きやすく、沢山出しちゃってます笑 これからもよろしくお願いします! (2022年3月17日 18時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
雲 - はじめまして、「ショウタくんを出せ」に爆笑して思わずコメントしました。マナティ推しですがめちゃくちゃ楽しく読ませていただいてます!シュント身内的な女の子にはこんなあしらいしてそうって想像出来るし、マナティ成分も高めで嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年3月17日 16時) (レス) @page39 id: 2da972bf1d (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - アキさん» はじめまして!自家発電笑いました(^^)楽しんでいただけて何よりですっ!シュントくん推しの自己満足満載ですが、これからもどうぞよろしくお願いします! (2022年3月15日 0時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2022年3月4日 17時