マジックアワー2【THE FIRST】

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(思ったより無難に終われそうだな)




緊張の中でも順調に進んでいた撮影に、内心そう思っていたのだけれど…




「ちょっと爽やかな感じも欲しいな。笑ってみようか」




ふとカメラマンさんに言われた一言で、つい体が直立不動のまま固まる。




「おっ、どうした？」

「……す、すみません」




慌ててぎごちなくポーズを作って、無理やり口角を上げてみるが、中々カメラマンさんのシャッターが切られない。




(あれ、わたし、どうしよう……)




“笑う”

それを意識した瞬間に頭が真っ白になった。
何故か分からないけど、どうしたらいいかわからなくて目が泳ぐ。上手くいかない状況に心が苦しくなって、泣きたいくらいなのに涙も出なかった。





「「…………」」




その場に一瞬、変な沈黙が生まれた。
やばい。なんで。どうしよう…どうしよう……




「ミヅキ、歌ってみな」

「っ？」

「大丈夫だから。好きな歌、歌ってみてほしい。……出来ればそうだな、あったかくて元気になる感じの曲」




腕を組んだ日高さんに優しくそう言われて、狭まっていた視界が少しだけ明るさを取り戻してきた。

ぐっと、顔に力が入る。
心臓はまだ、何かに掴まれた感覚のままだけど。




(大丈夫、いける)




歌なら、何をするべきか、身体が覚えている。






「──── さあみんなここに 愛の庭に

終わりのない 闇を抜けて
名もない花に 雲は語る
さあみんなここで 感じたままで Yeah！」


「いいねー！可愛いよー！」




シャッターの音が再開した。

ポーズをとりながら歌うと、カメラマンさんは親指を力強く上げて「そのまま目線ちょうだい」と興奮気味に言った。




「今を満たす 日差しに抱かれて
　La-la あの唄が 囁いている

　Oh あの空に蒔いた悲しみは 遠く花になるでしょう
　Oh Yeah それは未来へと 歩いてゆく道を照らし出す」

「「「uh uh 照らし出す〜！」」」




歌声に釣られたのか、周りに人が集まってきた。
この曲を知ってる人も多いのだろう。特に年長組のメンバーがノリノリで囃し立てている。

どうかな？私今、笑えてるかな？なんて、
目の前の人達の笑顔を見れば、答えはすぐにわかるような気がした。




「そう穏やかな 日溜りの庭で
　あの夢をまた 語り合いましょう

　いつか胸に抱いた喜びは 冷たい涙溶かすでしょう」

「「「Oh Yeah！！」」」



「── それは明日へと 流れてゆく河となるから」



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