マジックアワー2【THE FIRST】

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今日も今日とて夜練をしようと、チーム練の後 部屋に戻ってからもう一度練習室の方に来たら、どこからともなくピアノの音が聞こえてきた。




(………？)




ゆったりとした旋律に導かれるように、音の鳴る方へ足を向ける。
わずかに開かれた扉の隙間から光が漏れていて、ピアノの音もそこから漏れているようだ。




「………ミヤビさん」

「おー、ミヅキやん」




部屋の端に置かれたアップライトピアノの前には、練習着のままのミヤビさんが1人でいて、ポロん…ポロん…と指で軽く鍵盤を叩いていた。

声をかけた私を振り返ると、「おいで」と手招きしてくる。私が近寄っていったら、椅子の上で少し上に横にずれて隣に座ってと促してきた。




「今日のチームC良かったなぁ」

「ありがとうございます」




2人で座ったら肩がギュッと触れ合うほど小さな椅子に座って、ミヤビさんが気まぐれに弾く音色を聴きながら、私達はしばらく たわいもない話をした。

毎日男子校みたいなノリを繰り広げる参加者たちの事、ついて行くのにやっとなレッスンのこと。

それから、




「ミヅキの手、ピアノ向いてるで」




ミヤビさんの見様見真似で鍵盤の上に置いていた手を見やり、そんな事を言われた。




「ほんとですか？」

「うん。指がしっかり長くて、手のひらに厚みがあるやろ」

「、んー、たしかに？」




自分の手とミヤビさんの手を見比べながら、ピアノを上手に弾く自分を想像する。
そっか私、向いてるのか。嬉しい。




「しっかり鍵盤掴めるいい手。合宿終わったら、何でもええけど楽器やり」

「…………」

「？」

「あ、……うち、あんまお金なくて。本当はピアノとかギターとかやってみたいなーとは思ってるんですけど、なかなか」

「………せやな。まあ、何するにしてもお金はかかるわ」




まあ、そう言うよなという気持ちで、はい。と相槌を打った私に「でも」と言葉を続けるミヤビさん。




「なにするにしてもそうやけど、自分で稼げるようになってからでもええんやで。遅いことはない。
だから、ちょっとでもやりたい気持ちがあるなら、何としてでもやり。

それにな、楽器なら何でもええで。先生なら私が引くほど安くやったるわ」




パッとミヤビさんの顔を見れば、「ミヅキだから言うんやで」と片目をつむった。思わず「…好き」と呟いたら、ブハッと豪快に吹き出して 笑い声に呼応するように、彼女の指先から明るい音が響いた。



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