24⇒これが、『家族』 ページ25
辺りがすっかり暗くなった頃に、Aたちは寮へと帰ってきた。
「今日は色々買ったねー…」
改めて荷物を見ると、その量の多さに思わず圧倒されそうになる。
「それにしても二人とも。服とか買わなくて良かったの？」
「別にお姉様がくれたパーカーでイイし、とカナセは断言します」
「ナマエもお姉様がくれたこのパーカーがお気に入りなの、ってナマエはナマエは宣言しちゃう」
出会った当初、二人は所々破けている薄汚れた服を着ていた。
だが、服を買いに行ける状況ではなかったため、小さめのパーカーをとりあえず着させていた。
小さめ、といってもAの基準なので二人にとってはまだ大きいらしい。
予備個体と預備個体はワンピースを着ているかのように見える(ただし預備個体は少年のため、兄弟がいる同級生からお下がりのズボンを貰ってきたが)。
しかし二人はAのお下がりでもあるパーカーを気に入ったようだ。
「ならいいんだけどさ。…さて、アンタたちがここにいる間の生活用品は買ったし、疲れたからシャワー浴びてくるね」
＊＊＊＊＊
温かいお湯が音をたてながら頭上から降り注いでくる。
Aは一通り洗い流した後、脱衣場へと上がった。
お風呂は沸かしてなかったので、今日はシャワーで我慢する。
パジャマに着替えてドライヤーをかけるために鏡の前に立つ。
「この後はお湯を沸かしてあの子達をお風呂に入れて、ドライヤーで髪を乾かしてあげて、それから寝かしつけて……、！」
髪を乾かしながらふと鏡を見る。
そこには頬を緩ませてかすかに笑っている自分の顔が映っていた。
(…そういえば私、暇さえあればあの子達のことを考えている気がする)
学校に行っている間は、ちゃんとお留守番出来てるかな、とか。
二人が喧嘩してないかな、仲良くしてるかな、とか。
外出先では、このグッズは予備個体が好きそう、とか。
今日は預備個体がリクエストした夕飯にしよう、とか。
「―あぁ、そっか」
…本当はとっくに気付いていた。
一緒に過ごしていく内に、二人のクローンという存在が自分の中で大きくなっていることを。
(警戒しとかなきゃ、って思ってたのに。いつの間にか…私から心を開いていたなんて)
しかしAは、不思議と嫌ではなかった。
むしろ懐かしさと心地よさで、胸がいっぱいになっていた。
――それは何年か前に、自分が失ったもの。
「…これが、『家族』なんだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 281人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポン酢醤油(プロフ) - μさん» 大丈夫です！やり方は調べてやりますので心配無用です！送り方が分かり次第送ります！ (2016年5月15日 23時) (
レス) id: 80dffa9047 (このIDを非表示/違反報告)
μ(プロフ) - ポン酢醤油さん» あと画像の送り方については…すみません、私じゃ上手く説明出来ないかと思うので占ツク内で検索してみてください…その方が分かりやすいと思いますので…。お役に立てず申し訳ございませんでしたm(__)m (2016年5月15日 23時) (レス) id: aca375c09c (このIDを非表示/違反報告)
μ(プロフ) - ポン酢醤油さん» 今更返信致します、申し訳ないです…！まずはコメントありがとうございます。私の書く一方通行が好きだと言って頂けて感謝感激です。あと奏瀬ちゃんのイメ画もありがとうございます！ (2016年5月15日 22時) (レス) id: aca375c09c (このIDを非表示/違反報告)
ポン酢醤油(プロフ) - 最近読み始めて追いついたところです！μさんの書く一方通行かっこ良くてすきです。あと,私も禁書目録で作品書いてるってのと奏瀬ちゃんのイメ画書いてみたのですがまだ占ツク初心者でどう送ればいいのか分からないです。すみません教えてください(._.`) (2016年5月9日 6時) (レス) id: da413d3d63 (このIDを非表示/違反報告)
μ(プロフ) - 黒狼さん» うわぁぁコメントありがとうございます！一方通行書いてるんですか！分かりました、読ませていただきますね(∩´∀｀)∩ (2015年7月28日 0時) (レス) id: aca375c09c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：μ | 作成日時：2014年5月18日 19時
