彼女の目的 ページ15
直接の面識はない・・・そうAが言う
「まあいいや、俺は五井圭吾」
「はい、存じ上げております、早速ではございますがお話ししたかった事というのは」
言葉を切りAはカバンの中から数冊の雑誌を取り出しみせる
「こちらの記事は覚えておいででしょうか？」
「それは・・・七星ってことは君もしかして・・・」
「察しがいいようでとても助かります」
「じゃあ君は夏樹さんと美海さんの娘さんかい」
「はい、そうですね」
「じゃあ君の目的は・・・」
「はい、父と母の行方です」
「・・・そうだったのか・・・それならここでこのまま話すのはまずい」
「わかりました、では後日ということですね」
「俺もそれまでに資料とか引っ張り出してくるから」
「そうですよね・・・もう三年も前の記事ですもんね」
「すまんな、君の連絡先もらってもいいかな？」
「はい」
互いに名刺をだし交換するAはまだ学生だが海外での生活が長かったため自分用の名刺を持っていた。そのことに五井は少し驚いたが特に気にする様子もなくそのまま名刺交換をした
「じゃあ明日までに連絡するから」
「わかりました」
Aは会釈するとそのままビルを出て行った
ビルを出た後は学校に戻るわけでもなくただぶらぶらと町を歩いた
やがて小さな公園を見つけるとそこで遊ぶ子供たちとそれを見守る母親たちののどかな光景をみてAは本当ならば自分にもあったであろう思い出に思いを馳せてはみるがAにはそんな思い出はない・・・なぜならばAの両親はAがまだ三歳の時に失踪しているからだ
ぽんっころころ
Aの足元に子供たちのであろうボールが転がってくる
「おねーちゃーん」
子供たちはAに声をかける
「いくよー」
声をかけAはボールを投げてやる
「ありがとー」
子供にお礼を言われお母さんたちに会釈されたAは手を振ってその場をあとにした
あんな普通のシアワセを手に入れることができたなら今の私はいないのであろうか？
そんな哲学的とも妄想的ともとれるような考えをしながらAは町を散策し続けるのであった
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作者名：霧島るな | 作成日時：2019年3月31日 21時
