・ ページ6
.
「なんでもない。」
そう答えながら、
本当はもっと素直になれたらな、
と思う心をかき消す。
「ねぇ、知念。」
涼介は気にしてなさそうに僕に声をかける。
そしてくるっと振り返り、
僕の手から再びドライヤーを奪った。
カチカチッと電源を切ると、
途端に部屋が静かになる。
「なぁに。まだ全然乾いてないよ。」
「俺“も”好きだよ。」
にやりと笑った涼介を見て、再び顔が赤くなる僕。
なんだよ、聞こえてたんじゃん。
恥ずかしくって、キッと涼介を睨むフリをするけど、
これが効いた試しがない。
「だからそれ、毎回言うけど逆効果なんだって。」
ドライヤーを置いた涼介は、
僕を包み込むように抱きしめる。
こうなればもう僕の負けだ。
大人しく抱きしめられたあと、
遠慮がちに僕も背中に手を回す。
涼介の濡れた髪が冷たい。
けど、心はあったかい。
涼介の体温が直接伝わって、
僕の体温と混ざり合って溶け合う。
きっと、幸せってこういうことだ。
ぽたり、と涼介の髪から滴がしたたって、
僕の腕に落ちた。
それに気づいた涼介が離れようとして、
腕の力が緩む。
僕はまだ離れたくなくて、涼介に強く抱きついた。
「ちねん？」
涼介の声が優しい。
ふたりきりの時の涼介だ。
「…僕ね、りょーすけが、いちばんすき。」
「っ、へ、」
驚いたような声が降ってきて、
じわじわと恥ずかしくなるけれど、
今回はもう逃げない。
なんでもない、なんて言わない。
「りょーすけが、世界でいちばん、すきだよ。」
顔を見ては言えないから、涼介に抱きついた、
このままで許してね。
いつも幸せをたくさんくれる涼介が、
僕は世界で一番好き。
そして、一緒にいられるこの時間が、
世界で一番幸せなのだ。
「…俺も、世界で一番好きだよ。」
僕が一生懸命、拙い言葉で伝えたことを、
涼介はさらっと言ってみせる。
いや、本当は、耳の端が赤くなってること、
僕は見なくてもわかるけど。
そんなところも含めて、
やっぱり僕には涼介を超える人はいない。
これからも一緒にいたいし、
一緒にいてくれないと困るから。
たまにはこうして素直に伝えないといけないな、
と思った、そんななんでもない日のお話。
-----------------------------------------
ただふたりの幸せな空間が書きたくて書いたお話。
山場もオチもありませんが、
楽しんでいただけていたら嬉しいです。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
haruu(プロフ) - わあ、ありがとうございます！めっちゃよかったです！ (2020年10月18日 0時) (
レス) id: 797b9f327e (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - 名無し36907号さん» ありがとうございます！放課後バトルの続きですね！私もどうなるのか全くわかりませんが、書いてみようと思います。気長にお待ちください◎ (2020年10月7日 0時) (レス) id: c76645417a (このIDを非表示/違反報告)
名無し36907号(プロフ) - どの作品も最高に良かったです！放課後バトルの続きがめっちゃ気になります！よければ続き書いて欲しいです(^O^) (2020年10月5日 22時) (レス) id: 797b9f327e (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - なおさん» なおさん、ありがとうございます！そう言っていただけると本当に嬉しいです（ ; ; ）これからも頑張りますのでまた読みにいらしてくださいね＊ (2020年10月4日 21時) (レス) id: 3de45195fb (このIDを非表示/違反報告)
なお - 桜の散る頃に。 凄く良かったです！あまあまな話も好きですが、泣ける話も結構好きなので、私的には楽しめました！ (2020年10月4日 17時) (レス) id: 1baa7338bb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りょんな | 作成日時：2020年9月22日 21時
