検索窓
今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:53,997 hit

桜の散る頃に。 ページ23

※死 に関する切ないお話です。
苦手な方はご注意ください。
※恋人同士


-----------------------------------------



あの日から、俺は色を失った。


世界は全部、モノクロに染まったのだ。



____



あたたかく降り注ぐ陽射しと、
春の匂いを運ぶやわらかな風。


そんな幸せの見本みたいな日を、
俺は君と過ごしていた。



「りょーすけ、お花見行こうよ。」



休みの日は、ひたすらに眠るのが好きな知念と、
ゲーム三昧の俺。


そんな俺たちのデートは、大方どちらかの家だった。


週末ごとにお互いの家を行き来するのが、
その頃の俺たちの生活だった。


だから、知念がそんなことを言い出すなんて、
正直すごく驚いた。



「人、すごいと思うけど。いいの?」

「いいの。
こんなにいいお天気なんだからさ、
久しぶりに外出なくちゃ。」



引きこもりになっちゃう、
なんて冗談めかして笑う知念は、
なんだかいつもより楽しそうだった。



「じゃあ、行こっか。」



そこそこ名の知れたお花見スポットまで、
歩いて15分。


桜より先に、人混みが目に入ってきた。



「うわ、。」



思わず溢れた俺の心の声を、知念が小さく笑う。



「ふふ、涼介、帰りたい?」



こてん、と首を傾けて。


そうすれば俺が帰れないことを知っていて。



「ばーか、行くぞ。」



人混みが苦手なのは、お前もだろ。


ばっと手を伸ばして知念の左手を掴む。



「え、」



目を丸くする知念が握り返してくれないのを理由に、
きゅっと指を絡めて繋ぎ直した。



「ね、りょーすけ、」



普段は手なんか繋がない。


まだまだ同性愛者は生きづらい時代だ。


でも。



「大丈夫だよ、みんな桜に夢中だから。」



その日はどうしても、手を繋ぎたかった。


特別な日にしたかったんだ。



「そう、かな?ふふ、まあいっか!」



納得したのか、諦めたのかはわからないけど、
ようやく俺を手を握り返してくれた知念。



「りょーすけ、行こ!」



今度は知念が俺の手を引いて、人の中へ入って行く。


その日最初の写真は、桜ではなく、
その愛おしい後ろ姿。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (112 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
168人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

haruu(プロフ) - わあ、ありがとうございます!めっちゃよかったです! (2020年10月18日 0時) (レス) id: 797b9f327e (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - 名無し36907号さん» ありがとうございます!放課後バトルの続きですね!私もどうなるのか全くわかりませんが、書いてみようと思います。気長にお待ちください◎ (2020年10月7日 0時) (レス) id: c76645417a (このIDを非表示/違反報告)
名無し36907号(プロフ) - どの作品も最高に良かったです!放課後バトルの続きがめっちゃ気になります!よければ続き書いて欲しいです(^O^) (2020年10月5日 22時) (レス) id: 797b9f327e (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - なおさん» なおさん、ありがとうございます!そう言っていただけると本当に嬉しいです( ; ; )これからも頑張りますのでまた読みにいらしてくださいね* (2020年10月4日 21時) (レス) id: 3de45195fb (このIDを非表示/違反報告)
なお - 桜の散る頃に。 凄く良かったです!あまあまな話も好きですが、泣ける話も結構好きなので、私的には楽しめました! (2020年10月4日 17時) (レス) id: 1baa7338bb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りょんな | 作成日時:2020年9月22日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。