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「僕は、…僕は、涼介がいいの。」



必死になって絞り出した声は、
きっと今外で車が通っていたら聞こえないほど、
小さな声。



「俺じゃ、だめだよ。」



現実離れしたほど綺麗に笑った涼介は、儚かった。
消えてしまいそうだった。


涼介じゃなきゃだめだと言う僕と、
自分ではだめだという涼介。


…僕は成長したから、わかるよ。


涼介が僕を嫌いになったわけではないということ。


涼介は昔も今も僕のことを思って
行動してくれているということ。

それから、涼介は僕に
“普通の人生”を送って欲しいと望んでいること。


ねぇ、そのために姿を消したんでしょ?


涼介がそばにいたら、
僕は間違いなく“普通”から外れてしまうから。



「…ぁ、」



その瞬間、僕は気づいてしまったのだ。


僕が“普通”から外れた瞬間、
それは同時に涼介の“普通”も奪ってしまうということに。


僕は馬鹿だった。


なんでそんな簡単なことに、
いままで気付かなかったんだろう。



「ふ、」



思わず笑いが溢れた。



「知念?」



僕は、自分のために涼介から離れることは出来ないけれど。


涼介のためなら、涼介から離れることはできる。



「涼介、ごめんね。」

「、は…?」

「涼介が付き合うなら、ん〜そうだなぁ、
可愛くてふわふわした感じの女の子がいいと思うよ。」



言葉とは裏腹に、オンナノコ、が冷たい響きを持って
部屋に響いた。


涼介は目を見開いて、僕はゆっくり微笑んだ。



「幸せになってね、涼介。」



そっとベッドを抜け出した僕を、
涼介は止めようとしない。


僕が服を着ている間、ふたりとも何も言わなかった。


布の擦れる音だけが、部屋に響いていた。



「俺は、年上の落ち着いた人がタイプだよ。」



荷物を持って部屋を出ようとしたとき、
涼介は僕に聞こえるように、そう言葉を投げた。



「…そっか。」



予想、外れちゃったな。


さよならは言わずに部屋を出た。


月明かりが眩しかった。


それでも僕は月を真っ直ぐに見ながら、
心の中で問いかける。


ねぇ涼介、最後に僕を抱いたのは、僕のため?
それとも涼介のため?



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結ばれないやまちねを書くのは苦手なのですが、
せっかくなので挑戦してみました。

この2人が結ばれないとしたら、それはきっと
お互いがお互いを想いすぎていた場合だけだろう、
という作者の妄想です。

オトナは難しい。→←・



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haruu(プロフ) - わあ、ありがとうございます!めっちゃよかったです! (2020年10月18日 0時) (レス) id: 797b9f327e (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - 名無し36907号さん» ありがとうございます!放課後バトルの続きですね!私もどうなるのか全くわかりませんが、書いてみようと思います。気長にお待ちください◎ (2020年10月7日 0時) (レス) id: c76645417a (このIDを非表示/違反報告)
名無し36907号(プロフ) - どの作品も最高に良かったです!放課後バトルの続きがめっちゃ気になります!よければ続き書いて欲しいです(^O^) (2020年10月5日 22時) (レス) id: 797b9f327e (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - なおさん» なおさん、ありがとうございます!そう言っていただけると本当に嬉しいです( ; ; )これからも頑張りますのでまた読みにいらしてくださいね* (2020年10月4日 21時) (レス) id: 3de45195fb (このIDを非表示/違反報告)
なお - 桜の散る頃に。 凄く良かったです!あまあまな話も好きですが、泣ける話も結構好きなので、私的には楽しめました! (2020年10月4日 17時) (レス) id: 1baa7338bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りょんな | 作成日時:2020年9月22日 21時

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