第四十八舞『赤き英雄』 ページ48
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アイザックとすれ違う様に、国木田が太宰の居る所へ来る。
太宰の出血の量と青白い顔に、国木田は素早く太宰の元へ駆け付けた。
太宰は目を閉じており、呼吸も浅かった。
「太宰!聞こえるか!」
国木田は太宰の肩を叩き、意識を確認した。
太宰はゆっくりと目を開ける。
「…何だい、国木田君…折角死ねそうなのに…」
太宰の口の端からも血が流れた跡があり、太宰の容態はかなり深刻なのだと悟る。
「背に乗れ、与謝野女医の所へ急ぐぞ」
太宰は国木田に背負われるが…待ってくれ、此処で死ねそうと云い張った。
しかし太宰に抵抗する力は残って居らず、国木田は与謝野の居る場所へと急いだ。
「…国木田君…交差点に出てくれ…あのヘリを追って欲しい、」
太宰がぼそぼそと呟く。
探偵社へ遠回りになるが、国木田は頷いた。
遠くに見えるヘリ。国木田は小走りで追った。
すると、やけに周辺が肌寒くなって来た。
太宰は目を見開き、危惧の表情を見せる。
「アイザ君か…」
太宰はこの冷たさが、アイザックの異能だと直ぐに気づいた。
突如、横浜の街全体が赤く光った。
それと共に、一瞬にして真紅の氷が街中を包み込む。
灰色の煙を真紅の氷が覆い、煙は赤い粒子となり、風に吹かれて海の方へ消える。
アイザックの氷は、代償の氷。
凍らす対象さえ明確に判って居れば、どんな物でも凍らせる事が出来る。
遠くに見えた大きな交差点。
墜落したヘリと、真紅の氷を操る青年。
「ッ、アイザ君!」
太宰は叫んだ。
痛みを忘れ、彼に届く様に。
青年の金色の髪が靡いた。
青年が顔をこちらに向けると、その表情は酷く恐ろしく、獲物を狩る猛獣の様な瞳をしていた。
しかし 太宰と国木田、二人の姿を瞳に捉えた途端、その表情はふわりと柔らかくなった。
ひとつ…彼が微笑んだかと思えば、
青年の身体を、呑み込む様に真紅の氷が覆った。
瞬間、この辺りだけでなく、横浜全体に充満する灰色の煙は、真紅の氷と化す。
大きな赤い結晶を形成し、きらきらと輝きを放った。
アイザックが見せた刹那の笑顔は、真紅の氷に変貌した。
いつの間にか、太宰は手を伸ばして居た。
掴めるものすらそこには無く、ただ宙をかいた。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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