第五舞『鮮血の双翼』 ページ5
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灼熱は収まり、代わりに真紅の氷が現場を凍結させて居た。
「…矢張り、彼か…」
太宰がふむ、と考える素振りをしながら云った。
真紅の氷の影響で、この辺りの気温は零度以下に低下。
太宰は寒さに肩を震わせた。
「太宰さん!」
敦の声だ。
太宰が声のした方に振り返ると、心底驚いた。
だらんと気を失った金髪の青年を、敦が背に負って来た。
「ありゃ、大きな荷物だねぇ」
太宰が微笑むも、呑気にしては居られない様だ。
青年の身体が、真紅の氷で所々凍って居る。
その青年を背に負う敦の身体も、真紅の氷で凍って居た。
太宰は、速い足取りで敦に近付き…そして触れる。
「大丈夫かい?敦君」
真紅の氷は 細かい硝子の破片の様になり、輝いて消えていった。
「この人が…火事を止めてくれました」
敦はただそれだけを告げ、太宰を見詰める。
「…そうだね。先ず与謝野さんに診て貰おう。君は直ぐにでも温まった方が良い」
太宰は、敦と青年を交互に見ながら云う。
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…見た事の無い天井。
久し振りに、冷たさの感じない所で寝ていたみたいだ。
「…」
青年は、横になったまま辺りを見渡す。
「やぁ、お目覚めかい?」
青年は意識のはっきりしない中で、太宰を見る。
ゆっくりと瞬きをすると、今度は目を擦る。
「おやおや、まだ眠いのかい?」
「…
青年はふいっ、と太宰から目を逸らしてしまう。
太宰が青年の寝ている寝台に座り、少しだけ笑う。
「君の名前を聞いても良いかな?」
青年は太宰から顔を逸らしたまま、こう云った。
「アイザック・バシェヴィス・シンガー。…俺の名前」
青年の横顔は、引く程綺麗だった。
「私は太宰、太宰治だよ。宜しく、アイザ君」
「…アイザ?」
金髪の青年…アイザックは、眉を顰めて太宰に云い返す。
「長いからだよ。良いだろう?別に」
アイザックは、満更でも無い様子だった。
「…勝手にしろよ」
そして、少し間を置いてから、アイザックは云った。
「悪かったな…助かったよ」
「おやー?そう云う事は、相手の目を見て云いなさい。
…照れ屋?」
巫山戯てそう云う太宰に、アイザックは軽く舌打ちをした。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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