第三十六舞『紅玉の守護』 ページ36
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「…俺は別に、あんたと話す事なんて無いけど」
アイザックは、決して目を合わさずに太宰に云った。
「聞いてくれるだけで良いよ」
あぁそう、とアイザックが興味なさげに云うと、太宰は微笑む。
そして、こう話し始めた。
「私ね、昔番犬を飼って居たのだよ。優秀な番犬だったのだけど…私は犬が苦手な上に、その犬は良く吠えた」
「意味が判んねぇな、何で飼うんだよ」
アイザックは短剣を磨きながらも、きちんと太宰の話を聞いた。
「余りにも云う事を聞くものだからね、便利だった」
太宰は続ける。
「何時の日か私は…彼を手放して、暗闇に置いて去った」
「…彼?人だったのか?」
「おや…口が滑ったみたいだ」
笑顔を絶やさない太宰に、アイザックは少々不審に思った。
「あんた…何が云いたいの」
「私はね、ただ…彼を手放した事を後悔していたんだ」
太宰がアイザックを見た。
その時、初めて二人は目が合ったのだ。
アイザックは、素早く太宰から目を逸らし、太宰に聞いた。
「何で後悔したんだよ」
「それは今、教えられない。けれど、これだけは云える。彼が便利だったからと云う理由で、後悔した訳ではないよ」
アイザックはそれを聞いて、その場を立ち上がった。
「…残念、その犬手放して無かったら…助けに来たかもな」
アイザックは、部屋の出口へと早足で歩いた。
扉に手を触れ、太宰に振り返ってこう云う。
「あんたは明日死ぬらしい。だから、高い蟹缶買って来てやる」
生意気な顔付きで、太宰に云い放ってから部屋を出た。
部屋を出た所に、部屋の見張りが二人居た。
「おい餓鬼、俺らにも
アイザックは、壁に寄り掛かって居た小汚い男の真横に、短刀を投げて突き刺した。
「はは、悪い。手が滑った」
アイザックはへらりとしながらも、内心苛立って居た。
元より、此奴等が気に食わないのだ。
「んの餓鬼!!」
アイザックは後ろから身を掴まれるが、自分の後頭部で、後ろの男の顔面に打撃を与える。
そして、目の前の男に蹴りを入れた。
部屋の外で繰り広げられる壮絶な打撃音を、部屋の中で聞いて居た太宰は…
「…恐いねぇ、ご愁傷様」
密かに笑って居た。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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