第四十三舞『憐憫たる情景』 ページ43
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アイザックが、机に顔を突っ伏していた。
見た事の無い彼の様子に、一同は唖然としていた。
与謝野に何度解体されたのか知れたものでは無い。
国木田は、無言でアイザックの肩に手を置く。
「久々に骨のある解体だッたねェ。アンタ良い顔してたじゃないか。何時でも怪我するといい」
与謝野が黒い髪をさらりと靡かせ、アイザックに云った。
「…俺の異能、怪我付き物なんだけど…」
アイザックが、やる気の無い目で与謝野を見た。
…数え切れない程、分解されたのだろう。そう思った。
すると、事務所の扉が開いた。
「太宰か。社長は何と仰って居た?」
「先ずねぇ…警察は既に動いて居て、社長の方に『横浜の街の安全を護るため協力を願いたい』と来たそうだよ」
太宰が、灰色の粉が入った小袋を片手にひらひらと挙げた。
「太宰、その手に持って居るヤツは…」
「サクリファイスだよ、気体にする前のね。アイザ君が商人から容赦無く奪い取ったものさ」
太宰がアイザックの方に近づくと、見た事の無いアイザックの様子に、太宰は思わず笑った。
「ど、如何したの…!?ゴリラが兎になってる…!」
何時もなら苛立って云い返すアイザックだが、この時だけは
ぽかんとしていた。
「今は無理…何とでも云えよ…」
「やーい、ミニマム!童貞!食いしん坊!ミニマム!」
流石に聞き捨てならないアイザックは、机をバン!と叩いて立ち上がった。
「おいワカメ、海に返してやるよ」
「君が何とでも云えって云ったんじゃあないか!」
太宰とアイザックが云い合って居ると、国木田が痺れを切らして止めに入る。
「やめんか!街の一大事なのだぞ!子供の様な喧嘩しおって!」
国木田が眼鏡を光らせ、太宰とアイザックを引き剥がして云った。
「街の一大事だからこそ、アイザ君を何時もの調子に戻さなきゃならないのだよ」
太宰はそれを見越してアイザックを挑発したのだ。
危うく殴られる所だった。
「一番心配する所は、アイザ君の主が未だにシンガーさんだと云う事だ。本当良く帰って来れたよ」
そう云った太宰の真剣な顔付きが、この場に緊張を走らせた。
「サクリファイスを気体にして爆破させる装置を解除する。詳しい事は今説明するから、良く聞いて」
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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