第三十二舞『想起して忘却』 ページ32
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「…ッ離せ、やめろ…!」
妙な感覚だ。この男に鮮血の注射をされてから、思考が働かない。
何の為に、何故この場所に居るのかさえ、判らなくなって居た。
「我慢強いですね。二本目が必要ですか?」
「触んな…!」
記憶が薄れていく。顔も、名前も。
「忘れて仕舞うのは、仕方が有りませんよ。それが貴方の異能力なのですから」
目の前の男の顔がはっきり見えなくなる。
「ぜったい、絶対忘れてなんか…やらねぇから…あいつは、
俺の」
名前を忘れて仕舞った。黒い蓬髪、砂色の外套の男。
仕事の終わりに、洋菓子を食べた。
この前は、俺が良く行って居た激辛
酷く辛そうにしていた。
家でも俺の事を、ゴリラだの何だの悪口を云うから、腹が立って枕を投げてやった。
____案外、悪く無かった。
これを、何と云うのだろうか。
仲間?同居人?否…
誰が何を云おうが構わない。
「…俺の、
アイザックは強気の顔で、振り絞って云い遂げた。
目の前が真っ暗になった。
____
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「太宰、追っ手は無いか」
国木田が車を運転し、前を見ながら太宰に云った。
「谷崎君の異能が、良い具合に敵を混乱させて居るねぇ」
谷崎の異能で敵の視界を混乱させ、後は賢治の腹ペコ無双状態
だった。
国木田が運転している車には、太宰と敦と鏡花、四人が乗っていた。
「驚いたねぇ。車を襲って来た大群が、全員ゴロツキだった
なんて」
確かに、この二年でアイザックがして来た事からすれば、沢山恨みを買うだろう。
「まぁ…精々彼が、協力すればアイザ君を手懐けられるとでも
誘ったのだろうけど」
「彼…って?」
敦が太宰に聞いた。
「…シンガーさんだね。アイザ君の実の父親だ。彼は昔から
マフィアに居てね。恐ろしく優秀な科学者だったのだよ。
それがある日、マフィアに盾を突いた。勿論自分は何もせず、
アイザ君を使ってね」
それが、マフィア殺しの少年を造り上げた真相だ。
すると、車が停車した。
前方から敵が押し寄せて来たのだ。
囲まれると厄介だ。
「済まんが敦、此処を頼めるか」
敦は頷き、車から降りた。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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