第十五歩 ページ15
＿＿＿＿
＿＿
＿＿＿＿五年前。
『これは当然の報いなんだ、正義』
『でも、おかしいよ、痛がってるし、もう許して、あげて…』
『おかしい？おかしいのは世間だ。いつの間にか警察よりヒーローが賛美される世の中になってしまった』
血生臭い地下で、神崎の父親はヒーローを捕まえては残虐な行いをしていた。
それを、まだ小学六年生の神崎に見せ、神崎を立派な悪に仕立てあげようともしていた。
父親の個性は『感情操作』。相手を恐怖で屈服させることが出来る。
『お前がやれ。このヒーローを殺せ』
父親からの過酷な拷問を受けたヒーローを、幼い神崎に殺せと言ったのだ。まだ生きているヒーローを。
『むり、』
無理だと断ろうと父親を見上げたが、途端に恐怖が波のように押し寄せた。父親はその個性で、神崎に恐怖を付与したのだ。
怖い。やらなければ殺されてしまう。まだ幼い神崎にはどうしようもない恐怖だった。
『ころ、して、いい。…きみが、助かるなら、本望だ』
弱ったヒーローの声。ヒーローは笑っていた。優しい笑顔だった。
神崎は震えながら、鋭いナイフをそのヒーローに向けた。こんな優しいヒーローを殺したくはない。
『ごめん、なさい…』
おねがい、おねがい、ヒーロー。
俺のヒーローが、居るなら、たすけて、たすけて。
＿＿＿＿助けて。
今にもナイフを振り下ろそうとした時。
壮絶な音を立てて、閉ざされた地下室の扉が開いた。
瞬間、父親によって溢れかえっていた恐怖はスッと消える。まるで個性が消えたように。
神崎がびっくりして振り返れば、既に捕縛布で父親を制圧している黒髪の男性の姿。
『個性が出せないか。はは…なるほど。お前が噂のイレイザーヘッドか』
『辿り着くまで怠かったが、まあ個性が出せなければただの人間だな。カタルシス』
父親のヴィラン名を呼び、イレイザーヘッドは通信機で警察と連絡を取る。
『こちらイレイザー。ああ、捕獲した。俺も長いこと『抹消』はしていられない。早めの到着頼みます。あと重傷者も居るので、治療できる人も呼んでください』
淡々としたイレイザーヘッドの声が、とても安心した。
『ヒー、ロー…』
へたりと力が抜けた幼い神崎と、イレイザーヘッドの目が合う。
『…遅くなったね』
『おそく、なんか…』
この時からずっと、イレイザーヘッドは神崎の恩人で、ヒーローだったんだ。
＿＿
＿＿＿＿
BASTARD to be continued＿＿＿＿？
話数ぴったりのため、ここでの挨拶で失礼します。この度はお話を読んで下さりありがとうございます。一段落したので完結と言う形になりますが、もしも続編が出来たなら、改めてお知らせ致します。それではまたいずれ、お会いしましょう。
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ソラノイロ - ヒーローにならなくても、人生は続いて行く…何ですかこの神小説は…！？ (2022年12月10日 23時) (
レス) @page50 id: a15aad9fab (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ひながきさん» ヴッ！！！！ありがとうございます…書ききってよかったです…！！ (2021年12月12日 22時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - 神ですか？仏ですか？ってくらい面白かったです。 (2021年12月10日 1時) (レス) @page50 id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 冬空さん» こんにちは！！3周！？？ああああありがとうございます！！好きと言っていただけてとても嬉しくて私も発狂します((((こちらこそお付き合いくださりありがとうございました！！！ (2021年9月2日 7時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
冬空(プロフ) - こんにちは！神崎くんが好きすぎて3周目をしてたら完結コメントをしていないことに気づき、発狂しかけてる者です、、遅くなってしまいましたが、完結おめでとうございます！！ (2021年8月31日 12時) (レス) id: 01a8377650 (このIDを非表示/違反報告)
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