第六十四譚 ページ14
_
＿＿＿＿七日目。
相澤が、車で埼玉県まで向かっていた。氷室からの連絡は一回もなく、どんな状況かも分からないが…結果がどうあれ、頑張った事には変わりない。
そんなことを考えながら運転をしていると、いつの間に合宿をしている高層ビルに辿り着く。
車を停めて、外に出る。車に寄りかかって、ビルの入口から氷室が出てくるのを待つ。時刻は午後四時。この時期ではもう夕暮れ。
時々入口の自動ドアが開くが、それはこのビルの職員で。ドアが開く度に、氷室が出て来たのでは無いかと…チラチラとそちらを気にしてしまう。
「だぁから言っただろーがよ、俺は＿＿＿＿」
ドアが開くと共に聞こえて来た、中性的な少年の声。少年は逆巻と話しながら出て来たようだ。その声を聞いて、相澤はすぐに声の方向に視線を向ける。出て来たのは氷室だった。
氷室の方も、相澤の姿を視界に捉えた瞬間…話を中断して、相澤の方を凝視した。
固まる氷室の背中を、逆巻がトンと軽く押す。背中を押された氷室は、ダッ、と走り出し、相澤の元まで駆け寄ると。
「せんせ、なあ見て、取った！」
頬にもガーゼが貼られていたり、腕も包帯が巻き付けてあったりとボロボロの氷室が、ヒーロー仮免許証をズイズイと相澤に押し付けながら言った。
見て見て、と自慢するように言う氷室の顔は、本当に嬉しそうに笑っていて、ドヤ顔にも見えた。
仮免許証には確かに氷室の名前や顔写真が貼られていて。思わず相澤の口角も緩んでしまう。相澤は自分の緩んだ顔を隠すように、自分の口元を手で覆う。
「…？何か言えよ」
「いや…」
「まさか取るとは思ってなかったんだろ？びっくりしたかよ」
「…ううん。取ると思ってたよ」
ただ期待をして待っていた。氷室なら取ると思っていた。でもいざ成し遂げた姿を見ると、教師としてはすごく嬉しい。
「まあまあ、相澤君は今浸ってるんだよ。ね？」
「逆巻さん…いや別に。それよりありがとうございます。こいつがお世話になりました」
と、相澤は氷室の頭を撫でながら言った。その手で頭をぽんぽんとしながら、相澤は氷室と視線を合わせる。
「良くやったな、氷室」
相澤にそう言われた瞬間、何とも言えない感情が湧き上がる。
「どういたしまして。氷室君は良く頑張っていたよ。それは俺のお墨付きの仮免許証だ」
氷室は、このむず痒い感情を振り払うように、「じゃーなクソ教官」といつものように暴言を吐き捨てた。
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 921人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
χCielχ(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» ヤッターーー！！！！逆巻やったな推し入りだぞ！！ありがとうございます…佐藤拓也さんは…いいですよね…☺️ (2022年1月1日 19時) (
レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 雪月花さん» そうなんです…！逆巻についてもいつかちゃんとやりたいですね…！！おおおおおまわりさん！！！？？お巡りさん！！！推し警察お巡りさんありがとうございます逮捕！！！！(？？？？) (2022年1月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - χCielχさん» とりあえず逆巻さん推しになりますね！()佐藤拓也さん...いいですね！あいそう！！ (2021年12月31日 11時) (レス) id: 532289bdd0 (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - χCielχさん» そうなんですね！いや〜逆巻さん………相澤先生と雄英で出会ったなんて………！逆巻さんと相澤先生ーーーーーーーーーーーー！！！！好きっすわ！！(推しが増えた。好きだと思ったら推しにする。これぞオタク)←お巡りさんこいつです！！このオタク危ない奴です！！ (2021年12月31日 2時) (レス) @page50 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 雪月花さん» ふふふ逆巻は昔雄英高校の先生だったのもありそこで高校生の相澤先生と会ってたんです…！！(新情報)次の更新くらいには氷室が何を言ったのか明かすつもりです！！逆巻は意外とそうなんです…あと怖いところもあるのでおまわりさん！この男です！(？) (2021年12月31日 1時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
