Necromance98 ページ48
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「……翔さん。私、貴方が救ったアイザックさんに、二度も助けられたんですよ」
精神世界で聞いた声とは、また別の少女の声だった。藤崎は友人が少なく、然も藤崎の居場所を知る者はそうそう居ない。けれど案外、藤崎の見舞いに来る人物は数人居た。
この声の正体は、藤崎の初恋。創られた死神、アルマである。
彼女の寿命は、もうそろそろだ。
人間に近い感情を持つアルマにとって、寝込む藤崎の姿を見ると胸が締め付けられた。画材として描かれてから十年の月日が経ち、アルマの容姿は変わらず。藤崎だけが成長して行った。
然し、さほど変わらぬ藤崎の容姿。何時までもあの頃の面影が残って居る。無邪気に笑っていたあの笑顔も覚えている。昔から今まで、特に変わりは無いが…。藤崎が『均衡者』になってからは。大量の情報を宿すようになってからは。
藤崎が絵を描く頻度も少なくなった。『視え過ぎて』、描きたい物が描けなくなったと。彼は云っていた。本人は軽くスランプだと笑っていたが。
誰も理解出来ないのだ。藤崎がその脳に宿す、気が狂いそうな程の莫大な情報量を。情報自体を理解出来る人物は居るだろう。けれどもそれを宿す藤崎の苦悩などは絶対に、永遠に誰も、理解出来ない。
親兄弟殺し。同意であれど生徒殺し。殺人薬の開発。巨大異能兵器考案。間違いなく狂って居る。
だが彼は、『大切なもの』の為ならば自分の身でさえ投げ打つ人物。アイザックを救い出そうとした事、大切だと云う事は本心。元より優しさがあった。
彼を狂わせたのは『世界』であり『異能』。
それもまた運命である。
「あ。アルマちゃんだ」
窓から青年の声がした。その声にアルマは過剰に反応し、座っていた椅子から立ち上がる。
「…な、成瀬、様…!」
成瀬様と呼ばれた青年。以前藤崎と会ったことがある。流れる様な金髪に、黒布で両目を隠す青年。彼もまた死神。
「えっ、やだなぁ!様付けはやめてよ、なるくんでいいよ!」
「め、滅相も御座いません…」
同じく死神である成瀬に、これ程までに敬意を示しているとなると…もしや成瀬は、かなり格上の存在なのではないか。そう云った事が見て取れる。
それを藤崎は、「なるきゅん」等と呼んでいたのだ。
「それで、しょーくんが縛る魂は回収出来た?…まあ、無理もあるか」
「申し訳御座いません…」
「いや別に怒ってないよ!?確かにこのネクロマンサーの霊縛強すぎて俺も結構引いてるから!」
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何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…!笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました!こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…!!!本当にありがとうございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - アッ……ヤバイ エッ俺の心臓無事?大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです。 最初見たとき大号泣してしまいました。 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......!是非に!!!!私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......!!! (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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