Necromance50 ページ50
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「全く懲りないねェ、藤崎」
再び探偵社を訪れた藤崎。腕の怪我は綺麗に治癒されて居た。
与謝野は医者である為、此処に来た時に藤崎の呼吸が浅い事に気が付いた。大方異能の反動で、内臓が破壊される寸前だったのだろう。
「あはは、悪いね。君にはお世話になり過ぎてる」
医務室で会話をする与謝野と藤崎。毎度毎度藤崎は怪我をしたり、死にかける。その度に与謝野が治すのだ。藤崎は、少しばかり申し訳無さそうに頬を掻いた。
「本当さ。高い酒の一つでも奢りな」
「そうするよ。今度持って来ればいいかな?」
与謝野は酒が好きだ。藤崎も酒を好む。昔、与謝野が毎度の詫びでもしろ、と奢らせる為に飲みに誘った事があった。だがもう絶対に藤崎と二人では飲みに行かない。そう決めた。
「安いのなんて持って来たらタダじゃ置かないからね」
与謝野は腕を組んで、寝台に座る藤崎を見下ろした。藤崎が何故か金持ちなのは知って居る。藤崎は「はいはい」と笑う。
「…あ。そうだ…今日、何曜日だっけ…」
「アンタボケるのが早くないかい?今日は日曜だよ」
「日曜…善かった…明日か」
『日曜日』と聞き、ホッと安堵した。一見、無職に見える藤崎は、何時も何かに追われて居る。それを繕う様に巫山戯た態度を取る。
「…藤崎。アンタ一体、何を急いで居るンだい」
「あきちゃんには俺がそう見える?」
「あぁ、見える。アンタは妾の前じゃ随分気を抜く」
藤崎は医務室の床に視線を落として、微かに笑った。そうして右の掌を眺め…誇らしそうに、決意した様に云う。
「………急ぐさ、そう長くないからね」
ぽつりと、与謝野にも聞こえない位の、小さな声で云った。
与謝野は手を腰に当てて「何だって?」と聞く。藤崎は顔を上げ、与謝野と視線を合わせる。
「あきちゃんが綺麗だから気が抜けちゃうのかも〜!!飲みに
行こうお願い一寸だけ」
にぱっと笑い、さらりと云う藤崎に、与謝野は蔑みの目を向ける。辛辣な視線には微動だにしない鋼の精神を持つ桜髪の男。
何時もこうして、都合の悪い場から逃れる。
本当に善く笑う藤崎。間抜けに見える態度を取る。平気で嘘を吐く。だから誰も、自分すらも気付きはしないのだ。
彼の孤独や、慟哭には。
太宰は変わった。友人である織田の云う事を、成し遂げる為に。だが藤崎は変わらない。昔のまま、止まったまま。脳だけが情報を有して行く。
だがそれも、後少しの辛抱だ。
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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