Necromance22 ページ22
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「太宰君、こっちこっち」
と、藤崎は太宰を手招きして誘導する。ある一つの部屋の扉を開けて太宰を中へ押し込む。電気を付けると見えたのは、質素な部屋。
絵を描く為に必要な物以外、この部屋には無い。描かれた絵が床に散らばり、かなりごちゃついて居る。
「ぎゃぁぁお恥ずかしい!これ失敗作!これも!はいさよなら!」
床に散らばる絵を掻き集め、ズボォッと塵箱に入れる。失敗作と呼ばれ、散らばって居た絵は…どれもこれもプロの様な絵ばかりだった。
「ここに座って!お酒は絵を描いた後ね!」
太宰の肩を掴んで、無理矢理座らせる。太宰は両手を前に出して「はいはい」と溜め息。藤崎と居ると、溜め息の量が多くなるのは必然だ。
「翔、私別に逃げないから。落ち着き給えよ」
「これが落ち着けるかぁ!?太宰君だよ?太宰君だよ!?」
「私だから何なのさ…」
私だから何なの。と問う太宰に、人差し指を口唇に当てて
「内緒」と返した。そうして筆を取り、先ずは太宰をじっと見詰める。
画家として、画材を褒めるのは当然の事だ。当然なのだが、藤崎の場合はそれをストレートに口にして仕舞うので少し問題がある。
「綺麗になったね、太宰君」
単に褒めただけであるが、じわじわと…あ、やっべこれ拙い事云ったのでは無いかと後悔が押し寄せる。
鳥肌が立ったのか、太宰は二の腕を摩りながら云った。
「どぅっ…!?む、無理!きもぢわるい…!!」
「誤解しないでくれ。画材を褒めるのは、絵描きとして当然の事だ。そうこれは社交辞令。頼むから警察に訴えないでね」
「おろろろろろろ」
「吐く真似は辞めて!!」
この場に突っ込み役が居ないので、仕方が無いからお互いにお互いを突っ込まなければならない。
気を取り直して、撫でる様に筆を走らせる。久々に最高の画材を目の前にして…手が震える。風景や果物も描いてみたが、どれも微妙だった。当たり前の様に完璧に描けて仕舞った。
太宰だけだった。完璧に描けなかったのは。それ所か未完成に終わって居たのだ。集中力を保つ為に、半無意識的に 懐にあった煙草を出して咥えた。
最後の一本で、空になった箱を床に投げ捨てる。銀のライターを着火させて火を付ける。すると、直ぐに太宰の声が聞こえた。
「ねぇ」
太宰は続ける。
「…その煙草の銘柄、ライターも。忘れる筈が無い。全部…
織田作と同じ物だ」
太宰が、藤崎の歪みに気付いた。
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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