君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage５８ luxury liner ページ8

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辺り一面氷漬けにされた海。レイは自らの足を氷の海に突き刺す様にして、真正面から暴走する船を受け止めた。



ズザザザ、と氷を削り、段々と横浜の街に近付く。このままでは街に衝突する。少なくとも港付近では犠牲者が出る。




「＿＿＿＿っ！」




口から血が滲む位に歯を食いしばった。


次は嵐を操る。船の進行方向とは逆向きの強風を叩きつける。
こんな帆も無い巨大に、風如きが効く訳が無くても。


『怪力』と、『元素操作』の駆使。太宰の血も遠慮した。船は止まってくれない。血管が張り裂けそうな程に力を使って居る。




止まれ、止まれ、止まれ、幾らそう考えても無駄だ。別の、別の策を考えなければ。


レイは耳を澄ませた。巨体が氷を削る騒音の中、ある人物の声だけに耳を澄ませた。





＿＿＿＿レイ君、上だ。




太宰の声が聞こえた。うえ？と、ぐるぐる思考を巡らせた。止まりはしないが、速度を落としている今なら。太宰はレイの為、より簡潔にそう伝えたのだ。



溢れた薔薇色の瘴気。レイが瘴気を出すのには、二つの定まりがある。一つは、力が溢れて止まない…暴れたい時。


もう一つは、極度に血が足りない時。過度な血の渇望による、
限界突破。人間で云う火事場の馬鹿力の様なものだ。


今レイから溢れる瘴気の原因は、圧倒的に後者だ。



四肢が千切れようとも、絶対、絶対に。



唸る様に声を上げた。自分でも如何叫んだのか判らない位に。
それ程に今の状況では、自我を保つのが難しい。



海の氷が次々に固まる様に、上空へと伸びた。氷の津波が、暴走した船を覆って打ち上げる。直線に進行して居た船は、角度が変わった事により、大きく速度を落として停止した。



驚く事に、横浜の港寸前。犠牲者無し。



斜めに傾いた船が、大きな氷の津波に固められ、本来の海面から浮かぶ様な形で……停止して居た。



これ程の力がまだレイに残って居たとは。「上だ」と指示したのは太宰だが、真逆本当にやってくれるとは。



きっとレイは暴走寸前。早い所迎えに行かねば危ういと思うのだが、此処から如何降りたら善いかを考えようとした時。




レイが霧になって太宰の元へ戻って来た。




「……あれ、迎えに来てくれたの」



その問いに答える事無く、レイはふらふらとして膝を着く。太宰はレイを支えた。



「まあ…善くやってくれたよ」




太宰の言葉を聞き、レイは太宰の外套をぎゅっと掴む。太宰は
「おや、珍しい」と小さく呟いた。


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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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