salvage26 ページ26
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冷たい床、鉄格子。何時もの場所に戻って来た。今日は随分外に出て居た。太宰が『所有者』になってから、外に出る機会が多くなった。
今日の心残りは、『花を見たい』と云った少女に花を見せられて居ない事だ。少女は何も云わないが、きっと待っている。
外に出る機会が多くなった今なら、花を持ち帰ることも可能かも知れない。
うとうとしながらそんな事を考えて居た。ふと、遠くから普段しない足音が聞こえて来たので、ぱちりと目を覚ます。
太宰では無い。足音の鳴る間隔からして歩幅が狭い。せっかちか短気か。だとすれば、
「おい」
がしゃん、と鉄格子を掴む音と同時に声が聞こえた。聞いた事のある声。太宰が『蛞蝓』と話して居た青年。間違えては行けない。そうだ、名前は…。
「なめはら」
「混じってんぞ能天気」
はっ、と口を押さえるレイ。その表情も真顔だ。更に腹が立つ。中原は片手に紙袋を下げて居た。紙袋から、何やら美味しそうな匂いがしたため、中原が持つ紙袋を凝視した。
「何だ?判んのか?」
ごそごそと紙袋から取り出したのは、赤い果実。林檎だ。レイはそれを見た途端、ぱあっと顔を明るくした。
「りんご…!」
下手したら、口から唾液でも垂れそうな勢い。中原は林檎を片手で上に投げては受け止め、意地悪気な笑みを浮かべてレイを見下ろす。
「俺の名前がちゃんと云えたらやるぜ?」
「なかはらちゅうや」
「云えんじゃねえか!!先刻の態とだろ!?」
と、レイに林檎を投げ付ける。ぱしんとりんごを受け止めて見詰める。食べたいのは山々だが、同じ『隷属部隊』の仲間にも食べさせたい。そう思ったのも束の間、中原の手にある紙袋は鉄格子を越え、どさりとレイの隣に置かれた。中には沢山の林檎。
「食わせてやれよ。看守には俺から云ってある」
幹部では無いが、中原も中々の権力者だ。中原の優しさに胸の辺りが締め付けられた。この感情が判らず疑問を抱くレイだが、中原を見詰めて云う。
「ありがとう」
「…礼を云うのは此方だ」
レイが首を傾げると、中原は話す。
「思い出したんだよ。龍頭抗争の時、俺が汚濁使った後だ。俺の汚濁を解除した太宰と二人で瓦礫に呑まれて狭い空間に閉じ込められた。
太宰は非力だわ俺は指一本動かねえわでこりゃ一晩青鯖と密室
状態だと絶望した時に手前が瓦礫吹っ飛ばしたんだろうが。覚えてねぇのか」
勿論、レイが覚えている筈が無い。
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ポートマフィア『隷属部隊』 隷属者No.01
レイ・ブラッドベリ:身長173cm。体重57kg。非常に強力な異能を有すが、人間の血を必要とする。大人しい印象だが、敵味方関係無く殲滅してしまう事がある。命令違反も多々ある為、扱いは困難。
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χCielχ(プロフ) - 綺弌さん» うわーーーありがとう!それにも続編が笑笑((ぉぉぉぉ楽しみにしてますっっ!! (2019年3月24日 19時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 姫歌さん» やっと続編できましたありがとうございます…エエッいいんですか!? (2019年3月24日 19時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
綺弌(プロフ) - 50話到達おめでとう〜(*’ω’ノノ゙☆パチパチ 毎日読むのが楽しみで仕方無かった!! 擬音復唱シリーズ続編の方でも楽しみにしてるね!!← 私の方もあともう少しで公開の準備が整うよ!! (2019年3月24日 17時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - 続編のお祝い小説書いていいですか(真顔) (2019年3月24日 16時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 詩歌さん» ひええええうれしいです!ふぉっ、お、乙彦さんですか超うれしいです!!彼が一番格好いい人だと私も思ってます( ˇωˇ ) (2019年3月24日 14時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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