salvage17 ページ17
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ポートマフィアビル、エントランス。
無言で歩く太宰の後ろを、レイも無言で歩く。やけに太宰の足取りが速いので、偶に小走りで太宰を追う。レイの手枷は既に新しい物に代えられて居た。
「そう云えば、レイ君」
何時もより一回り低い声で、太宰はレイの名を呼んだのだ。レイはそれを気にする事無く、何時も通りに返事をする。
「なんだ」
「…『隼』は如何したの」
太宰は振り返る。氷の刃の様な冷たい目で、レイを貫く様に見て居る。然しレイは動じない。確かに、太宰の様子が何時もと違うのは判って居た。
「にげられた」
無表情で云うレイ。然し目を逸らして仕舞った。産まれてこの方、嘘等吐いた事の無かったレイ。吐く必要が無かった。慣れない嘘。太宰には効かない。
否、或る意味効いたのかも知れない。
太宰から目を逸らし続けて居ると、ぐいっと首枷の鎖を強く引っ張られ、前に蹌踉けた。云う事を聞かない狂犬を躾るかの様なその動作。
「…ぐ、」
余りにも強く引っ張られて、枷に首を絞められる。
「嘘を吐くのかい、私に。君が」
「…うそじゃない、にげられた」
レイの眉間から流れる血。間違い無く『隼』に撃ち抜かれた物だ。レイは『隼』と対峙している。レイがまともに捕まえようと思っていれば、逃げられる筈が無い。
それでも嘘を吐くレイ。太宰はこれが嘘だと知っている。レイは優し過ぎるから、上手に嘘を吐けない。
そうしてもう一度、首の鎖を強く引く。
「ねえ、レイ君。君の下手糞な嘘で私を騙せると思うかい?逆効果だよ。気になって仕舞うなあ。君が私に嘘を吐いてまで護りたい『隼』が…一体、どんな人間か」
珍しいレイの『嘘』に妬いた子供の様に、太宰はこの頃から
『隼』に興味を持ち始めた。
あぁ、拙かったと云わんばかりに、レイの目が見開いた。これも珍しい表情だ。太宰は愉快そうに微笑む。
「…だめだ、あいつは」
「教えてレイ君。君は『隼』を逃がした。そうだろう?素直に
話せば、『隼』の件は慎重に進めるさ。悪い様にはしないから」
太宰の顔には、手懐ける事の出来ない猛獣を、意図も簡単に檻に閉じ込める様な…絶対零度の笑みが浮かんで居た。レイの薔薇色の瞳が太宰を捉えて揺れた。
「…にがし、た。あいつは、泣いて…いたから」
太宰は満足そうに微笑んで、レイの純白の髪を撫でた。
「善い子だね、
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ポートマフィア『隷属部隊』 隷属者No.01
レイ・ブラッドベリ:身長173cm。体重57kg。非常に強力な異能を有すが、人間の血を必要とする。大人しい印象だが、敵味方関係無く殲滅してしまう事がある。命令違反も多々ある為、扱いは困難。
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χCielχ(プロフ) - 綺弌さん» うわーーーありがとう!それにも続編が笑笑((ぉぉぉぉ楽しみにしてますっっ!! (2019年3月24日 19時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 姫歌さん» やっと続編できましたありがとうございます…エエッいいんですか!? (2019年3月24日 19時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
綺弌(プロフ) - 50話到達おめでとう〜(*’ω’ノノ゙☆パチパチ 毎日読むのが楽しみで仕方無かった!! 擬音復唱シリーズ続編の方でも楽しみにしてるね!!← 私の方もあともう少しで公開の準備が整うよ!! (2019年3月24日 17時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - 続編のお祝い小説書いていいですか(真顔) (2019年3月24日 16時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 詩歌さん» ひええええうれしいです!ふぉっ、お、乙彦さんですか超うれしいです!!彼が一番格好いい人だと私も思ってます( ˇωˇ ) (2019年3月24日 14時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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