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太宰に頬を叩かれ、漸く目が覚めた。自分が百体もの
『北森鴻』を殺すより、『人造人間の全停止』をした方が早い。


けれど、収まらない。この激情が、こんなにも自分を大量に目の当たりにして、正常で居られる人間が何処に居ようか。



自分が偽物かも知れないと思うのが普通だ。それなのに太宰は、「君が本物だ」と北森に云ったのだ。




「善いかい?私にとっての『北森鴻』は…鴻君、君だけだ。ポテトサラダが美味しくて、怖い程に私に過保護な君こそ、私にとっての鴻君なのだよ。

人造人間はその人物の思考、行動を受け継ぐけれど、それまでの経由は受け継がない。百体の『君』が動いても、私は直ぐにでも君を見付けられる」



青年は赤くなった自身の頬に触れ、正気を取り戻した瞳で太宰の鳶色の瞳を見た。


何故、如何して、俺を見付けられる自信がある。何処からそんな自信が生まれる?




「如何して」





「簡単さ」






目を細めた太宰。微かに微笑んで、青年にこう云い聞かせる。






「君が私の友達だからだよ」





そう口にした太宰の声を聞き取ると、青年の目が潤んだ。きらりと光を反射した目。瞬きをすると、その目から涙がぽろりと流れた。



今まで、自分の一方通行だった太宰への思い。云うなれば、依存体質と依存対象の関係だった彼等は、太宰の一言で、『友人』に変わった。





「あぁ〜、もう直ぐに泣かない。君今年で二十歳でしょ?」




「うん、はたち、」




うわあ、見えない。と太宰が疑いの眼差しで北森を一瞥する。
確かに顔は大人びたものの、言動はさほど変わらないのだ。



手の甲で涙を拭い、何時もの強気の瞳で辺りを見渡した。眠る『北森鴻』の人造人間達を指差して、こう叫んでやった。




「お前らなんか、治くんに相手にもされないんだからな!
ざまあみろ!」




やり切った様な顔で。相変わらずの北森だ。





「えーっと、満足したかい?」




「大満足」





そう、と珍しく苦笑いの太宰。この空間の少し先に、何かの装置が見える。





「あれだと思うよ、全停止の装置」




太宰の後に付いて、その装置の元へと向かう。


するとまた、暗証番号を入れる装置だった。




「またこれかあ、まあ思い当たるものは幾つかあるけれど…」




と、次々と入力して行く中、視線を感じて後ろを振り返った。






「治くん、やばいかもしれない」





「え?何がだい?あ!ほら間違えた!」





「俺が全員目開けてる」




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【要】注意異能力者

北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。


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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:χCielχ | 作者ホームページ:χCielχ  
作成日時:2019年1月19日 15時

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