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「な…んで、これ」



驚いて固まって仕舞い、中々受け取らない北森に…少年は北森の手に直接触れて渡した。自分の力で傷付け無い様に、優しく触れていた。



「大切なものだって、しってる。だから拾った」



少年の手は冷たかった。体温を感じられないその手は、人肌を知らない孤独な手。




「……大きくなったな」




ぽん、と青年の亜麻色の髪の上に軽く手を置いた。



「大きくなったな」と、まるで北森の事を知っていたかの様な口振り。だが北森は彼の事を覚えて居ない。





「レイ君」





太宰の物静かな声が響いた。太宰は微笑んで「レイ」と呼ばれた少年を見た。あの頃と、昔と全く変わらない彼の容姿を見ていた。





「私は?」




太宰は自分を指差して、うきうきとした雰囲気で少年に問う。暫く間を置いて、少年は真顔でこう答えた。





「かなり、でかい?」




「え?何で疑問形なの?」




少年は首を傾げて悩んだ。自分が何故疑問形にしたのかを考えて居るらしい。中々答えないので、痺れを切らした太宰は話を変える。




「あ!先刻の『遠吠え』君でしょ!やるならやるって云ってくれなきゃ困るのだけど!」



「悪かった。つい叫んだ」





「一寸。一寸待ってくんない?」




二人がまるで深い仲の様に話す物だから呆然として割り込めなかったが、見ず知らずの少年が太宰と明るく会話をしているのを見ると少し腹立だしい。


少年の方は楽しそうでも無く、無表情を保つ。それがまた腹立だしい。





「その赤いの、まだなおせる」




ズタズタになった赤いミサンガを指差した。織田の贈り物であり、御守りだったミサンガを取り戻して安心した。だが安心するのはまだ早い。



人造人間の援軍。少年は踵を返して、太宰と北森に背を向けた。少年の黒い円套がひらひらと揺れる。





「まかせろ、通さない。行け」





先程より多い、人造人間の数。どんな異能力者であれ、この量は。その場に留まって居ると、少年は薔薇色の瞳で此方を見た。





「早くしろ。ここから先は…、みられたくない」





見える尖った犬歯。震える少年の手を見ると、獣の様に爪が鋭く伸び出して居た。少年の異能の全貌が…見える気がした。



ぐい、と腕を引っ張られた。ハッとして見ると、太宰が北森の腕を引いて居た。





「レイ君なら大丈夫。此方だ鴻君!」





此処に居るのは危ないと云わんばかりに、少年とは逆方向に駆けた。振り向く事が出来なかった。



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【要】注意異能力者

北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。


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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:χCielχ | 作者ホームページ:χCielχ  
作成日時:2019年1月19日 15時

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