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その日の夜。太宰はもう居なかった。無事水道代を払えたのだろうと、少し名残惜しくはあった。
昨日の夜の内に、何かトランプでもすれば良かった。
それから一日、二日、三日。
太宰から、何の音沙汰も無い。
新しい連絡先は交換して、いつもは腹立つ絵文字とかをたくさん送って来るのだが。
少しだけ。少しだけ探偵社に…覗きに行くだけ。無事ならそれでいい。
探偵社のビルまで来た。階段を登ろうとしたら、上から人が降りて来る音が聞こえた。
「っと…はぁ重…本当太宰さん何して…」
両手に書類の山を抱える敦が、太宰に愚痴を云いながら階段を降りていた。
「中島くん」
「え、あ!北森さん!」
「大丈夫?」
と、北森はお得意の爽やかな笑顔で、書類を半分持とうとする。敦は北森の本性を知って居るが、人と接する時に自然とこうなってしまうのだろう。
表の顔と本性の差が凄まじい。何せ、怒り狂った北森を目の当たりにしているのは、実際被害にあった狙撃手の男性と敦だけだ。
「いえ!大丈夫です!皆さんうずまきに居ますよ!」
「そ?」
と、敦もうずまきに行く心算だったので、短い距離だが一緒に行く事にした。
「何?その書類の量」
敦の手にある書類の山を指差して、北森は「うわぁ」と云う顔で書類を見ていた。
「あぁ、これですか?実は太宰さんが三日間勤務放棄してて…僕に回って来てるんですよ…」
「…治くん、居ないの?」
「はい…また入水か何かだとは思うんですけどね…」
あはは、と敦が困った様に笑った。たしかに太宰の事なら有り得る。然しそれはそれで拙くないか。当たり前の様にのこのこ帰って来る…なんて。
当たり前の事なんて、何処にも。
ちりん。
うずまきの入店時に鳴る、優しい鈴の音色。
「一寸見せて!」
「え!?」
敦の持っていた書類全てを横から奪い取り、適当に端っこの席に座って書類に目を通し始めた。素早い北森の動きに、呆然と立ち尽くす敦。
代わりに書類に目を通してくれるにしても申し訳無い。敦は北森の正面の席に座ってじっと彼を眺めて居た。
目の動きが速い。全てに目を通して居るのでは無く、何か特定した情報を探して居ると見える。
「…そんなに見ないで」
敦の目線が気になり、書類から目を離さずに云った。
「あ、ご、ごめんなさいい!」
と、敦の目線は明後日の方向に向いた。
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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