文豪共、酔い潰れて溺れろ。【文豪ストレイドッグス】−黒の時代−

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北森は太宰の手を強く引き、横浜の街を駆けた。太宰は勿論
現役陸上部所属である北森に付いて行けず、体力の限界だった。




「待ってよ、そんなに急がなくても、」




太宰は、敵組織からの射撃と云うのに慣れている。北森も射撃
自体には慣れているが、標的が太宰となれば話は違う。




「五月蝿い…！」




痣が出来て仕舞うのでは無いかと云う程、北森は太宰の手首を強く引いていた。



あの射撃…、間違い無い。新道財閥の人間によるものだ。だから北森は焦っていた。北森に銃術を教えたのは新道家の人間だからだ。



既に北森の射撃の腕は彼らを越してはいるが、それなりの手練である事は間違い無い。





ポートマフィア幹部を護った。殴り蹴りでは済まない。



それでも善い。太宰や彼等が居ない世界なんて、要らない。






「こっち！」




強く太宰の腕を引いて、曲がり角を曲がって路地に入る。
すると、銃を武装した男達が見えた。



此処の路地に先回りされていたのだ。




マフィアとも、警察とも違う。新道財閥の傘下の人間。北森と
太宰へ向けて、無数に発砲した。




咄嗟に先程 曲がった角へ戻り、銃弾の硝煙弾雨から逃れる。




何故、何故。




何故ここまで逃走経路が読まれて居る？



如何する、如何する。



息を切らしながら、壁に背を当てた。






「北森君」





声がして、隣の太宰の方を見ると…太宰の手には一丁の拳銃。
北森に使えと云わんばかりに見せ付けて来たのだ。






ドクン、と鼓動が鳴った。







＿＿＿＿あぁ、矢っ張り。






太宰程の頭脳の持ち主なら、『隼』の正体を知らない理由が無い。



これが最後の証明。北森が拳銃を受け取れば、北森は自分で自分の正体を明かした事になる。




マフィアに捕まる。当然処刑が待っている。












知った事か。





お前を傷付けようとする奴は、何であろうと…例えそれが神で
あろうと、絶対に、絶対に許さない。





北森は躊躇無く、太宰の拳銃を受け取った。




そうして路地に入った。その瞬間に発砲。一人の男の眉間を撃ち抜く。



相手からの数多の発砲は、向きと引き金を引くタイミングを見て避けた。



避けながら北森も三発撃つ。それら全ては、当たり前の様に相手の眉間に命中する。





「うわあ…銃だけでこれとは、化け物級だねえ」




太宰がちらりと路地を覗き込んでいた。




見えたのは…北森の開いた瞳孔と、釣り上がった口角だった。





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