揺れる犬耳2 ページ10
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佐久間くんが作った料理を囲んで、まるで昔からの友人みたいに語りながら3人で食べたご飯は、久々に心からあったまったような気がしてむず痒い。
途中「ショウタは昔泣き虫でピーピー泣いてたからショッピーってあだなだった」という佐久間くんからの暴露もあって、俺はショウタくんのことをショッピーと呼ぶことにした。
当の本人は照れているのか嫌だ!と口ではいいながらも、その口元が緩んでいたのを俺は見逃してはいない。
水汲んでくる!と外へ出た佐久間くんを見送り、俺はショッピーと2人でまったりお茶を飲む。
nb「それにしても、お前ほんとに何にも覚えてないんだな」
mm「うん、本当に知らないんだ。自分が何者なのかも、どうしてこの世界にいるのかも」
nb「そうか...佐久間、ほんとお人好しだからさ」
mm「佐久間くんがいなかったら、今頃俺は死んでた」
nb「俺も昔、佐久間に助けられたことがあんだよ」
mm「そうなんだ」
nb「そ。だから佐久間の頼みだと断れないっていうか。なんかあいつ、そういう不思議な空気があるんだよ」
ぽりぽりと木の実を齧りながら、ショッピーは尻尾をゆらゆら揺らしている。
佐久間くんのことを本当に信頼しているのが伝わってきて、俺はなんとなく泣きそうな気持ちになった。
nb「佐久間にはさ、本当は森に入るのももうやめてほしいんだ。でも、そのおかげで目黒は助かったし、そういう運命だったのかもな」
mm「佐久間くんは何度も森に?」
俺がずっと思っていた疑問を口に出すと、ショッピーの尻尾は分かりやすくピンと警戒態勢になる。
mm「ショッピー?」
nb「.....昔さ......佐久間が高熱を出した日があって。その夜見舞いに行ったらさ、あいつ、熱にうかされてうわ言みたいにこう言ったんだよ。
「おれ、蛇人族に会った」
って。ただ一度だけ、そう言った」
宙を見つめてショッピーは小声でそう言った。
その横顔からも、耳からも、尻尾からも。
今どんな気持ちで彼がそこに座っているのか、俺には読み取れなかった。
mm「佐久間くんは....蛇人族を探してるって言ってた。でも、会ったことはないって」
nb「うん、あの時だいぶうなされてたから、それが本当かどうか俺には分からない。でもあいつは本気で蛇人族を探してる。会ってどうしたいのか、俺にはわからないけど」
mm「そっか」
ショッピーが食べかけの木の実を転がす音だけが部屋の中に響いていた。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時