御伽噺4 ページ7
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大学というものに興味津々な佐久間くんに色々と話を聞かせているうちに、俺たちは村の入り口の鳥居をくぐっていた。
なんだか至る所から視線を感じ、自分よりだいぶ小柄な佐久間くんに隠れて歩く。
すれ違う人間には、佐久間くんが説明していた通り獣の耳や尻尾が生えていて、まるでお伽話の世界だ。
そしてすれ違う全ての人間が、耳をピンと立てて俺たちの様子を伺っているのが分かる。
mm「俺、すごい見られてる気がするんだけど」
sk「まあ仕方ないよ。目黒は背が高くて目立つし。余所者が来る時って大体都からの使者だからさ。みんな警戒しちゃうんだ、許してよ」
佐久間くんは困ったように笑ってそう言った。
許さないとか許すとかいう問題ではなかったのだが、とにかく早く佐久間くんの家に着きますようにと祈ってさらに体を縮こませた。
鳥居から少し歩いた民家の前で佐久間くんは立ち止まり、引き戸を開けて中に入っていく。
遠慮がちに後ろから入ると、広い土間のようなスペースが広がっていた。
sk「ここがおれんち!しばらくは自分の家だと思って寛いでよ」
mm「ありがとう佐久間くん...佐久間くんがいなかったら、俺、今頃、、、」
記憶の中の、俺の世界の佐久間くんの姿と重なって上手く言葉が続かない。
そんな俺に優しい笑顔を向けてくれた佐久間くんは、着ていた上着を脱いで台所の方へと向かった。
sk「よし!今日は目黒のもてなしで俺が美味しいもの食べさせてやるよ!」
mm「いや、いいよいいよ!これ以上なにも...」
sk「遠慮するなって!俺の友だちも紹介したいし」
mm「ありがとう...ところで、なんで上裸なの?」
sk「男の料理といえば裸だろ!」
よくわからない理論をかざしながら、上裸の佐久間くんは野菜を取り出して鼻歌を歌っている。
俺が行っても足手まといになるだけだよな、と部屋の中を観察させてもらうことにした。
当たり前だが、自分のいた世界とは違う内装。
服も勿論違っていて、これもまた村の中で視線を集めてしまった原因なのだろうと頷く。
あとで服を貸してもらえないか聞いてみようと心に決め、佐久間くんのところに戻ろうとした瞬間。
半開きの納戸の戸の向こうに、薄ピンクの美しい布が見えて俺は惹かれるようにその戸に手をかけた。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時