少年の憂 ページ38
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(ラウールside)
ru「あべちゃん」
ab「...帰ったんだね」
ru「うん。本当に会わなくてよかったの?」
ab「いいんだ。ありがとね、俺のわがまま聞いてくれて」
ru「こんなのわがままのうちに入らないよ...」
俺が昨日目黒くんを待っていたのは、他でもない阿部ちゃんから、伝言を頼まれたから。
だけど、阿部ちゃんを救うことまで頼んでしまったのは完全に俺自身のエゴだ。
俺がそれを伝えると阿部ちゃんはもともと大きな目が溢れちゃうんじゃないかってくらい目を見開いて驚いていたけれど、続いて目黒くんの伝言を伝えると、静かに涙を流していた。
阿部ちゃんにとってあの言葉がどんなに大切か分かっていてあの人はあの言葉を選んだ。
可能性が低いことは分かっているけれど、あの強い意志の瞳に期待せずに居られない自分もいる。
ru「諦めないでね。次にあの人が帰ってくるまで」
ab「ラウール...」
ru「...どうして俺は同じ蛇人族なんだろう。俺が阿部ちゃんを自由にしてあげられたらよかった」
ab「ラウール、こっちにおいで」
阿部ちゃんが優しく手招きするので、俺はおずおずと阿部ちゃんが寝ているベッドに近づく。
俺の手を優しく掴んでくれた指先は、少しずつ固くなって白い鱗が見えていた。
呪いは確実にこの人の体を蝕んでいて、こんなに優しい人なのに、いつかは記憶を忘れて.....
ru「いやだ、いやだよあべちゃん...」
ab「ラウール、泣かないで。
俺は幸せだよ。自分のために頑張ろうとしてくれる人がいて、泣いてくれる人がいて。
だから蛇人族に生まれたことを嘆かないで。
だって同じ一族じゃなかったらそもそも出会えてなかったかもしれないよ」
ru「どんな姿だって俺は阿部ちゃんを見つけるよ」
ab「ふふ。こんな可愛い弟がいて幸せだなあ」
そう言って俺のことを抱きしめてくれるその手は、ちゃんと柔らかくて少し温かかった。
優しくて、聡明で、強い阿部ちゃん
たった一言の約束を1000年間も待ち続けちゃう
真面目で人を疑わない阿部ちゃん
叶うことなら、俺が愛してあげたかった
いや、間違いなく愛してはいるけれど
呪いを解いて自由にしてあげられるのが
俺だったらよかったのに
ab「ああ、幸せ」
俺を抱きしめた身体を震わせて耳に届く低い声が
余りにも優しくて、温かかったから
阿部ちゃんの細い身体に顔を埋めて、俺はまた泣いた。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時