舞と月見酒1 ページ31
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nb「目黒!どこいってたんだよ!もう舞が始まるところだぞ」
mm「ごめん、ちょっと遠くまで散歩行ってて・・・」
ぜーぜーと切れる息を無理やり整え、俺はショッピーが取っていてくれた椅子に腰掛けた。
隣では行商人のコージがカメラを構えて舞台上の佐久間くんを撮影している。
康二が写真を撮る姿は見たことがなかったが、望遠レンズを調整しながら熱心にレンズを覗き込む姿がとても似合っていると思った。
nb「あ、始まる・・・」
舞台を照らす明かり以外が消えて、暗闇の中にあの美しい衣装を着た佐久間くんが立っていた。
ほどよい筋肉がついた美しい体は柔らかい布に隠され、遠目には女性のような美しさを放っている。
曲に合わせて佐久間くんが踊り出すと、まるで無重力かのように足音もなく飛び跳ねているように見えた。
mm「きれいだ・・・」
nb「うん・・・佐久間はさ、やっぱり不思議な力を持ってると思う。あいつが踊る姿を見ていると、なんだろう、心が浄化されるような気持ちになるんだよ」
fk「あの舞には、邪気を払う効果があると言われてるんだって」
mm「フッカさん!」
俺たちの後ろから、フッカさんが音もなく現れる。
fk「医者からしたら、そんな宗教じみたこと信用できないって思うけど。
だけど実際に見てるとさ、そんな力があるって言われても不思議じゃないなって思うのよ」
佐久間くんは10分近く踊り続けると言っていたけれど、終わってみたらあっという間だった。
そのくらい目が釘付けになって、佐久間くんの指先ひとつひとつの動きから、表情、視線の動かし方、衣装の揺れ動く様子まで・・・全てが繊細に自分の心に染み入るような感覚を感じた。
感動して心が震える、というのは比喩表現ではなく本当なのだと思った。
俺は人生で初めて、美しさに心を打たれて泣いた。
俺が泣いていることに気づいたショッピーは、何も言わず背中をさすってくれる。
阿部ちゃんも、佐久間くんも、
この世界に生きる人たちはみな美しい。
sk「ただいま」
mm「おかえり、佐久間くん」
祭りの後、先に家に戻っていると少し遅れて佐久間くんが帰ってきた。
sk「お祝いのお酒もらったんだ。飲まない?」
mm「いいね」
天気もいいからと、俺たちは屋根に登って月見酒をすることにした。
俺にとっては、この世界で迎える最後の夜だった。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時