1000年の孤独3 ページ28
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阿部ちゃんは昔、人間に出会って恋をしたらしい。
それは1000年も前の話で、きっともう相手の人間は死んでいるのに、阿部ちゃんはずっとその相手を探している。
俺たち蛇人族には秘密がある。
その秘密を乗り越えるためには、誰かに愛されなければいけない。
それは年齢とか、性別とか、そういう関係は超えて。
誰かを大切に思い、また相手の誰かも大切に思ってくれることで
俺たちは秘密を乗り越えて生きていく。
阿部ちゃんは昔そういう相手に出会っているからもう大丈夫だと思っていたのに。
夢をみた日から、その夢をなぞるように日に日に体調が悪くなっていくようだった。
ru「阿部ちゃん」
ab「あ、ラウール 。今日も勉強?」
ru「ううん、今日は勉強はいい...阿部ちゃん、もしかしてだけど」
ab「うん、ついに俺にも時期がきたみたい」
チロチロと細い舌を覗かせながら阿部ちゃんは寂しそうに笑った。
ru「でも、阿部ちゃんは1000年前に...」
ab「なんでだろうね。でも、俺は確実にあの時を迎えようとしてる。確信はないけど、自分の体のことだから分かるんだ」
ru「そんな、嫌だよ阿部ちゃん...!最近会ってるあの人は!あの人じゃダメなの?」
俺が知っていることに驚いたのか、阿部ちゃんは大きな目をさらに見開いてこちらを見つめた。
ab「知ってたんだ」
ru「ごめんね、気になってこの間追いかけちゃった」
ab「そうか...目黒はね、優しい。1000年前に出会ったあの人みたいにとっても優しい。
これまでも何度か人間は見かけたけれど、あの人と同じ匂いがするのは目黒だけだった」
ru「じゃあ...」
ab「でも、違うんだ。やっぱり俺の気持ちは1000年前からずっと....ずっとあの人を想ってる。きっともう会えないだろうから、この気持ちを捨ててまで生きなくてもいい。このまま運命を受け入れて、俺はそれでいいと思ってる」
ru「嫌だよ!阿部ちゃんに会えなくなるのは嫌だ!」
ab「ラウール...」
美しくて優しい大好きな阿部ちゃん。
俺が泣きながら縋るから、困ったように笑いながら優しく頭を撫でてくれた。
ab「必ず迎えに行く。だから、待ってて」
ru「え?」
ab「そう言われたんだ。1000年前に。
ずっと待ってたよ。だからもう...いいよね...」
阿部ちゃんはみんなの人気者で
誰からも愛されていて
だけどきっと、本当は孤独だったんだ。
待ち続けた人が来ない、この1000年の間ずっと。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時