平行世界1 ページ18
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診察用のソファーに腰かけると、あの日と同じように薄紫の浴衣に身を包んだフッカさんは、相変わらず白くて美しい手で俺にハーブティーを差し出した。
mm「どうして俺が蛇人族に会ったことが分かったの?」
fk「わかるよ、俺には何も隠し事できないよ」
そうはぐらかすように答えるフッカさんはふわふわと笑っている。
この人との会話は雲を掴むようで難しいが、俺が知りたいことは全てこの人が知っているという確信があった。
mm「俺が異世界からきたことも。なんでフッカさんは全部わかるの」
fk「みえちゃうんだよねー、俺には。なんだろう、オーラっていうのかな」
mm「蛇人族に会ったのは、人間じゃたどり着けない場所だって。なんで俺が行けたのか分からないけど」
fk「違う世界からきた目黒は、人間であって人間じゃないんだよ。この世界ではね」
mm「俺は、元の世界に帰れるのかな」
fk「そうだねえ」
ハーブティーから昇る湯気をふーっと吹きながらフッカさんは思案顔をしている。
fk「異世界との扉を開くのは蛇人族だよ。それは間違いない」
mm「蛇人族が人間を食べるというのは伝説?」
fk「食べるといえば食べるし、食べないといえば食べないかな」
不思議の国のアリスという童話に出てくるチェシャ猫が思い起こされた。
まるで謎解きのようなフッカさんの答えは、徹夜明けの働かない頭には難しい。
mm「佐久間くんが、蛇人族を探しているらしくて。なんでか知ってる?」
fk「佐久間には会いたい人がいるんだよ。その人をずっと探しているらしい」
mm「そっか」
どうやら殺すために探しているわけではないらしいが、それでも佐久間くんがあの湖を見つけられない可能性が残っている以上、伝えるのは難しい気がしてきた。
fk「異世界っていうのはさ、過去とか未来とかそういう簡単な話じゃなくて並行世界だって言われてる。2つの世界は交わらないはずなのに、どこかで線が近くなった瞬間お互いの世界に干渉を及ぼす」
mm「俺の世界が、この世界に?」
fk「そう。いるんじゃない?元から知ってた顔が、この世界に」
病院のベッドで寝ている佐久間くんと
この世界で自由に走り回る佐久間くんと
fk「こっちの人間に変化があれば、向こうのその人にも影響がでる。あまり考えもなくつっぱしると後悔するのは自分だよ」
最後まで謎解きみたいな言葉を残して、フッカさんは診察の時間だからとまたあの椅子へと戻っていった。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時