緑色の双眸4 ページ17
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絶対来てね、約束ね
そう言って俺に手を振る阿部ちゃんが見えなくなるまで、俺は何度も森の中を振り返りながら歩いた。
普通の人間は見つけられないというこの湖。
また明日も見つけられる確証はなく、本当にまた会えるのだろうか・・・と不安になりながら帰路についた。
あれほど遠く見えていた村の灯りも、靄のような中を抜けるとすぐ近くで。
こんなに近いのに誰にも見つかっておらず、蛇人族は伝説だと言われているのだから、本当に人間にあの場所は見つけられないのだろう。
空が白みかけているのに気づき、慌てて佐久間くんの家に帰ったが、まだ戻ってきていないようだった。
そっと布団に潜り込むも、蛇人族に会ってしまった興奮から全く眠気は襲ってこない。
あの深緑色の目に見つめられたあの瞬間から、
最後見送られるあの一瞬まで
美しく、そして妖しく笑う阿部ちゃんの顔が忘れられない。
『蛇人族は頭が良くて、美しいって言われてる。目力が強くて・・・』
あの日村に向かう道で聞いた佐久間くんの言葉が脳内で再生された。
美しくて、目力が強くて、一度目が合うとそらせなくなる
ふわふわと笑う姿は蛇とはかけ離れた容姿だったけども、ちらっと見えた先が割れた細い舌が彼がしっかりと蛇である事実をつきつけてきた。
どうしよう、佐久間くんに言おうかな
ずっと蛇人族を探している佐久間くん。
でもそれが、単純な興味じゃなくて、蛇人族を殺すためだったら?
そして佐久間くんにはあの場所が見えるか分からない。
それが一番気がかりなことだった。
ガラガラ
戸が引かれる音がして体を固くすると、どうやら舞の練習を終えた佐久間くんが帰ってきたらしい。
持っていったはずの美しい衣装はもう手に持っておらず、少し疲れた顔で布団にコロンと寝転ぶと、そのうち静かに寝息が聞こえてきたのが分かった。
俺はこのまま寝付けないことを察し、佐久間くんの布団をかけなおしてそのまま家を出た。
まだ朝早く申し訳ないなと思う一方で、聞きたいことが山ほどあった俺はその足でフッカさんの家を目指す。
まだ寝ているなら、病院にくるまで待とう。
そう覚悟して暖簾をくぐると、予想に反してフッカさんはまたあの椅子に座って揺れていた。
mm「フッカさん」
fk「随分早くに訪ねてくるねえ」
全てを見透かしたようなフッカさんはふわりと笑って振り返った。
fk「蛇に会っただろ」
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時