緑色の双眸1 ページ14
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mm「舞の練習?」
sk「そ。来週なんだ、五穀豊穣の舞。だから毎晩神堂の奥で舞の稽古なの」
mm「そっか・・・あの衣装着て踊る佐久間くん、綺麗だろうな」
sk「へへ。目黒も見てくれるし今年はがんばらなきゃな」
mm「あのさ、その間この村の周りを散策してもいいかな」
sk「だいぶ慣れてきたもんなこの世界にも。あんま遠くいくなよー?あと、この短剣を護身用に持ってて」
佐久間くんは使い込まれた短剣を渡してくれる。
俺はそれを大切に受け取ると、腰紐にさした。
sk「とにかく、危険を感じたら逃げろ。ショウタのところでも、フッカのところでもいい。異世界の人間だってことは絶対バレちゃだめだ」
フッカさんにすぐにバレたことはなんとなく佐久間くんには言えていなくて。
それ以来1人になるタイミングもなくてフッカさんのところには行けていない。
舞の練習がある今がちょうど良いと思い、俺は近いうちにフッカさんのところに行くことにした。
舞の練習が始まって初めての晩
心配そうな顔をした佐久間くんは、とにかく危険なことはしないようにと俺に念を押し、あの美しい服を手に神堂の方へと向かっていった。
俺は渡された短剣を腰にさし、あの日以来初めて鳥居をくぐって村を出た。
佐久間くんの言いつけを破るつもりはなかったが、自分が倒れていた森の様子も気になる。
村の外周を少し歩いて、あわよくばザリガニが釣れそうな池でも見つかれば・・・くらいの気持ちで俺は歩き出した。
村の灯りから少し離れると、あの日と同じような月明かりだけの森の端にたどり着いた。
さすがに森の奥に入ってまた野宿するのは嫌なので、木々に沿って森の淵を歩いていく。
あの日、焚火の前で振り返った顔を見た時は心臓が止まるかと思った。
俺が最後に見た佐久間くんは病院のベッドでチューブに繋がれていて、到底あんな風に元気に歩き回っている姿が見られるはずがない。
この世界の佐久間くんが俺に笑いかけてくれて、俺のことを面倒みてくれるのを嬉しいと思うと同時に、俺は少し悲しくて寂しい気持ちになってしまう。
現実世界の佐久間くんは、もう俺にこんなふうに笑いかけてくれることはないのではないか。
本当は俺自身も事故にでもあっていて、こんな都合のいい世界を頭の中で作り上げながら昏睡しているだけだったりするのではないか・・・
しかし、夢と思うにはあまりにリアルで、あまりに長く目覚めないのだ。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時