無気力な青年1 ページ1
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「いいか、目黒。この単位を落としたら留年。わかるか?」
mm「はい」
「今までは多めにみてきたところもあるが、今回ばかりはちゃんとやれ。いいな」
ため息をついた教授が夕陽に照らされた廊下を歩いて戻っていく。
その姿が曲がり角で見えなくなってから、俺はやっと肩の力を抜いた。
自分の成績が良くないことなど分かっていた。
苦労して入った大学も、結局は学力が足りず高校の先輩の口利きでなんとか入れただけで。
がんばらなきゃいけない、そう分かっているはずなのに
今日までやる気も出ずにずるずると毎日を過ごしてしまった。
このまま留年なんて、口利きしてくれた先輩にも申し訳ない。
kj「めぐきゅん」
mm「その呼び方やめて」
課題に使えそうな資料を探しに図書館へ向かうと、
同じ学科の向井康二がひょっこりと顔を覗かせた。
kj「教授、なんて?」
mm「これ落としたら留年だって」
そう言って手に握った紙切れをひらひらと振ると、
康二が顔を歪めて「やっぱり」と呟いた。
kj「あかん、留年はほんまにあかん。俺も手伝ったるから絶対いい評価取ろう」
mm「なんで俺なんかのためにそこまでしてくれるの」
kj「友達やからや。他に理由なんてないやろ」
「中国史やったらこっちやな」と康二は5本向こうの本棚の奥に消えていった。
俺のこのツイてない人生も、周りの人にだけは助けられてきた。
こんな俺のために課題を手伝ってくれる康二も、こんな俺のために頭を下げてくれた先輩も。
・・・本当に愛されたい人には愛されなかったが。
kj「めめー!早く本探さんと日が暮れてまうわ!」
mm「悪い。今いく」
kj「じゃあそっち探して。俺はこっち探すから」
康二に指示されて数本先の本棚の間へと足を進める。
ホコリをかぶっていそうな見るからに古い本がぎっしりと並んでいて、見ているだけで疲れてしまう。
適当に目についた本をパラパラとめくるも、どの本も文字が多くてわかりづらい。
どうしたもんかな、と視線を本棚に戻すと、一際古びた本に目を奪われた。
「白蛇伝」というタイトルらしい。
表紙には美しく白い蛇が描かれており、その赤い目が自分のことをしっかりと見つめているようなそんな不思議な感覚に囚われた。
ぱらぱらぱらぱら
強い風が吹いて白蛇伝のページがめくれる。
途中に挟まれたイラストですら自分のことを見ている気がして慌てて本を閉じた。
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勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» またまたコメントありがとうございます( ; ; )励みになります!いわだてをちゃんと出せなかったのは私の無計画な設定のせいです...現代編では活躍するように考えておりますので...!お気に入りキャラが見つかってくれていたら嬉しいです。明日から続編投稿しますね! (2021年4月25日 2時) (レス) id: c8ee31f7fe (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 異世界編、完結おめでとうございます!ほんとにほんとに今までにないくらい好きになってしまいました!登場人物たちもほんとに可愛くて...ひかる君とだてさん気になるところですね笑さらに現代編が楽しみになってきました!次のお話も絶対読みます! (2021年4月25日 0時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
勾玉(プロフ) - ミトコンドリア君さん» 初めまして。コメントありがとうございます!初めての投稿なので読みづらいところも多いかと思いますが、手探りで進めております・・・続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。応援ありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: d721a78ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - ご無理はなさらず、主様のペースで頑張ってください! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミトコンドリア君 - 初めまして!とんでもなくハマってしまいました...!こういうファンタジーみたいなお話すっごく好きでスノも好きなのでサイコーです!これからも応援しています! (2021年4月20日 22時) (レス) id: dfb6098aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:勾玉 | 作成日時:2021年4月18日 19時