【短編集】それ、反則ですよ。 (ページ10)

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#12　憧れの人。ページ10

『あ、あの、私、藍せんぱいがかっこいいとか付き合いたいとかたくさん言われてるの知ってて、で、それがすごい嫌で…なんか、話して数日しか経ってないのにすごく変だと思うんですけど、私は…

藍先輩が好きです』

その言葉を聞いた時、あの時初めて彼女と会話した時よりもっとずっと心が満たされて、暖かくなっていくような感じがした。

「ありがとう」

『あの、返事とか要らない…っていうか、もらえたらそれはそれで嬉しいですけど、迷惑かけるようなこととかしたくないので、もう、私の気持ちだけ伝えたくて…』ってしどろもどろになる彼女は、勇気を出して告白してくれたんだろうなということがよく伝わってくる。

「…俺もAちゃんのこと好きなんよ」

『え…え、だって、そんな、まだ1回しか喋ったことない…』

「それはAちゃんもそうだよね笑、…だって人を好きになるのに理屈とか関係ないでしょ？」と人生で初めてこんなくさいセリフを言った気がする。少し照れくさい。

「俺と付き合ってくれん？」

『…わたしっ、嫉妬たくさんするし、遠距離恋愛とか向いてないし、情緒不安定なんです、でも、それでも私が好きって言ってくれるなら、』

「うん、全部、受け止めるよ」

『ほんとですか、私1回付き合ったら離れないですよ』

「うん、離れないでよ」

俺が両腕を広げると、ためらいながらもそっと俺に寄ってきて、まだぎこちない震えた手で、俺の背中に腕を回してくれた。

あぁ、君はなんてかわいいんだろう。

俺の方が離れられないか心配なんだけどね。

『…好きです』

「…俺も」