【短編集】それ、反則ですよ。 (ページ9)

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#14　いっぱいハグして！ページ9

○たぶんつきあってる

○よくわからないおはなし

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『祐希さん〜こっち来て！ください！』

「はいはい、なぁに？」

『はい！』と言って手を広げてくる彼女。

本当に好きだなぁ、と思いつつ、ボールを床に置き、彼女の広げられている腕の間に入り込む。

そうすると、彼女が俺の背中に回してくる。

いわゆる“ハグ”ってやつ、彼女はこれが好きらしく1日に何回でも求めてくる。

「本当にハグ好きだねぇ」

『だってー、なんて言うんだろう、祐希さんの匂いするし、なんか包み込まれてるみたいな安心感するですよね。

…祐希さんは私の頭に手を回すのが好きですよね』と彼女に言われて初めて自分の癖に気付く。

自分の手を見てみると彼女の頭に手を添えている。

「本当だ、気が付かなかった…」

『あ、無意識だったんですね！でも祐希さんの手が大きくて、あったかいので私はとてもそれが好きです……ってなんか英語の和訳みたいになっちゃいました』

よく喋る彼女につられてふふっと笑ってしまう。

いつまでもこんな時間が続けばいいと願う。

『…そろそろ練習しなきゃいけないので離れます』と彼女。ハグの終わりは大体彼女から離れますね、と言われる。そーゆーところも、ちゃんとメリハリあって好きだけど、今は……

「まだ離れたくないなぁ、とか言ってみてもいい？」

『！』

『…じゃあもう一生離れません、祐希さんに引っ付いてます』って言いながら俺の胸に顔をうずめる彼女が可愛くて。

いいよ、の意を込めて彼女の背中に回した腕の力を少しだけ強めている。

それに応えるみたいに彼女の細い腕の力も強くなる。

少しの間、無言の空間が生まれる。

『祐希さん、好き！』って急に顔を上げてくる彼女。

「…俺も」

『ふふ、じゃあ離れます』

また今度、ハグしてくださいねって言いながら離れていく彼女に、本当はハグしてもらいたいのは俺の方なのではないかと、名残惜しさとともに感じる。

本当は、まだその手を引っ張ってでもここに留めておきたいけど、俺は大人なので、また次ハグする時を待つことにする。