【短編集】それ、反則ですよ。 (ページ7)

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#12　憧れの人。ページ7

第1戦目フルセットの激闘の末勝利をおさめた。

でも、チームの皆も分かっていると思うが、3セット目からの崩れようは普通ではなかった。

ギリギリ勝てたから良かったもののあと少しで本当に負けていたところだ。
それを、皆も、俺も、分かってる。

でも、だからこそ明日も確実に勝てるという確証なんてなく、なんなら負けてしまうのではないかと少しだけ心に影りがある、ってそんな事考えてたら勝てないよな。……明日も、勝つんだ。

第2戦目予想通り…いや、予想通りになってはいけなかったが昨日と同じく3セット目からバランスが崩れ、フルセットまで持ち込まれた挙句敗れてしまった。

チームの雰囲気も良くない。

……次負けたら、俺達はパリへの切符は無くなる。

勝つんだ、次こそ。

第3戦目、4戦目、5戦目と3試合ストレート勝ちしてきた俺達は、あの2戦目の影なんて1ミリもなかったと思う。

2戦目のあと、SNSを怖いもの見たさで覗くと「昔の男子バレーに戻ったみたいだ」「弱い、こんなんでオリンピック出場権取れるの？」「史上最強って言ったやつ誰w」等批判的なコメントが多くあった。見てしまったからには記憶を消すことも出来ず、冷たい指先を温めるようにして練習を続けたのを覚えている。

明日、ストレート勝ちすれば俺達はパリへの切符を獲得出来る。

ピコント鳴ったスマホにおもむろに目を向けると「明日、応援しに行きます！楽しみにしてますね🇯🇵」とAちゃんから連絡が来た。

……明日絶対失敗できない。

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そして無事ストレート勝利をおさめた。

俺達は抱き合って泣いて、藤井さんのユニフォームを掲げた。

俺達が勝てたのは藤井さんのお陰でもあると、みんなそう思っている。

インタビューを受けたあと、出口にはAちゃんがいた。

『……あ、藍せんぱい、ほんっと〜〜におめでとうございます！！』

「ありがとう、俺の事、見てた？」と笑って聞いた。

『…先輩しか見てませんでした』

『かっこよかったです、すごく』

『やっぱり藍先輩は私の憧れの人だなって思って、ほんとに、素敵でした』

「……ありがとう」

なんだか最初に彼女のインタビューを見た時より恥ずかしくて、むず痒い感じがした。