【短編集】それ、反則ですよ。 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:15 hit、合計:29,078 hit

#12　憧れの人。ページ4

昨日の試合もすごかったと思うけど、今日の彼女はもっとすごかったと思う。

サービスエースは1セットで2本くらいはとってたし、ブロックも俺が見る限りでは5、6本はドシャッっとしてた。

ストレートで勝ったけど、多分この試合の最多得点も彼女だろう。

間違いなく主役だな、と思った。俺は思ったより君に惹かれているみたいだ。

「…試合も終わったことだし、ここにいると俺らも注目浴びちゃいそうだから帰ろうか」

「ですね」

「はい」

そして席を立って出口へ向かう俺ら。すると祐希さんが突然「あ」と声をあげて静止した。

「どうしました？祐希さん」

「出来るならAさんが藍に会いたいって言ってるらしい」

「俺にですか、？」

「いや当たり前だろ、憧れの人に会いたくないやつがいるか」

「Aのモチベーションアップのためにも、お願い！だってさ」

「裏口の自販機のところでお願いしますだって…じゃあ俺らは帰るからさ、明日報告よろしくな」と言って「え、待たないんすか！」とうるさい有志くんを引き連れて帰っていった。

…ああいう人が余裕のある大人だよな、かっこいい。

と言っても、俺はそんなに余裕のある大人でもないので彼女に会うことに緊張している。自販機の前までついて一応マスクをする、少しでもバレにくくするために。

インタビューとかあるし結構時間かかるだろうな、と思っていたら彼女は意外とすぐに現れた。

『っ…あ、あの、髙橋選手ですよね』

「あ…はい」

『わ、私AAって言います、本日はお忙しい中時間を取らせてしまい、も、申し訳ありません！！

すいません…私なんかが会いたいって言っただけで…まさか来てくださると思わなかったので…』

「…名前、ちゃんと知ってるよ、それに今日俺がここに来たのも自分の意志だし、そんなに謝らないでほしいな

今日の試合、すごい良かったよ、サーブも、ブロックも」

『ほ、ほんとですか…！？』とキラキラした目で、自然と上目遣いになってしまうから可愛さを感じてしまって少し胸にくるものがあった。

『私…髙橋選手に憧れてて、ようやくここまでこれて、それで今のプレーをご本人に見ていただけたなんて感無量です…！！』

「インタビューで言ってたよね」