【短編集】それ、反則ですよ。 (ページ3)

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#12　憧れの人。ページ3

「まあ高校の時から知ってはいましたよ…あの子もすごく話題だったし、試合を見たこともあります。

…あの子は、ブロックが本当にすごいんですよね、あの時だって何本も止めてたし。あとサーブ、ジャンプサーブですけどちゃんと毎回入るし、力強いし…」

そこまで言って喋りすぎた、と口を噤む。

「…へーーー、そんなにあの子の試合見てたんだ？」と含みのあるような言い方の有志くん。

「いつになく饒舌だったね、藍」とにこにこ微笑む祐希さん。

やべ、実は前から気になってて試合見てたとか言ったら余計からかわれそう。

「じゃあさ、会いに行けばいいじゃん、直接。」と祐希さん。

明日の女子の試合観に行こうか、と祐希さんが言うと、おお、いいっすねー！息抜きに！と有志くんが言う。

「え、いや俺会いたいなんて一言も…」

「…言ってないかもしれないけど、Aさんだって藍が観に来てくれたらうれしいと思うし、流石にそろそろ皆オーバーワーク気味だから息抜きにちょうどいいかなって、有志も奥さんいるし。」

先輩の言う事は聞いとくもんだよ、って優しく肩をポン、と叩かれたから納得するしかなかった。

…明日結構楽しみなのは俺だけの秘密。

そして翌日の19時前頃、女子の選手たちがアップを始めた。

「お、アップし始めた、今日の相手は…確かプエルトリコだったよな」と祐希さんが言うのをよそに、俺はあの子をつい目で探してしまう。

あ、いた、と彼女を発見したときは彼女はサーブ練習をしていた。

バン！と強く響く鈍い音。ラインギリギリの所に落ちた。

やっぱりすごくサーブが上手い。最近はアタックのコースの打ち分けもすごい上手くなってたし、とか考えてると彼女が祐希さんの妹の真佑さんに呼ばれて耳打ちされている…と思えば急に観客席をキョロキョロ見渡し始めた。

「え、あれ、なんだっけ…Aさん藍のこと探してるんじゃないの？」と有志くん。

「あぁそうかも、真佑に今日藍と有志連れて試合観に行くって言ったし。」

え、何それ、俺聞いてないんですけど、見つかったらどうすればいいの…？

すると彼女と俺の目がバッチリ合った。

するとフッと体のが抜けたように彼女の手からボールが落ちて、2、3秒固まってたけどすぐにボールを拾って俺に会釈をしてアップに戻っていった。