白虎ノ思イ ページ11
*
『中島君、どうしたんですか。こんな夜中に』
私が振り向いた先には 白髪を揺らして佇む中島敦君の姿。
「依頼の帰りです、少し長引いて……その、夜野さんは…」
『少し…色々ありまして』
海に涼みに来たんだよ、と言えば 彼の不思議な色彩の瞳は揺れる。
嗚呼、着衣の乱れで分かるのかな。
それとも表情?匂い?雰囲気?
「あ、その…」
『いいです、気付いているのでしょう?』
「はい…」
彼は申し訳なさそうに目を逸らす。
やめてよ、私まで同じ気持ちになるじゃないの。
「だ、大丈夫…ですか?怪我とか…」
『大丈夫大丈夫、擦り傷が少しある程度です。』
「(あ、傷はあるんですね…)」
心の声が聞こえた気がしたけど 無視しよう。
二人の間に沈黙が流れる。
ザァザァと寄せては返す波の音だけが響き、
息の音は夜の静けさに溶けていく。
「その、これは独り言なので…」
『うん』
私は砂浜に腰を下ろした。
サラサラとした白い砂が 菫色のスカァトに付く。
太宰から貰った、私にとって初めての可愛い服。
「僕は元々、区の指定災害猛獣で…家族も居なくて、本当に……生きていても仕方が無かったんです」
でも、と彼は続けた。
「太宰さんが僕を助けてくれた。何も出来なかった僕に色んな事を教えて、光へと導いてくれた。武装探偵社で色んな人と出会って 、色んな敵と戦って……時には、
一旦区切り、私の横に彼が座る。
綺麗な白髪はサラサラと潮風に揺らされ、神秘的だと思った。
「そして、夜野さんとも出会えました。」
『私…?』
「はい。夜野さんは僕と同い年なのに……想像も出来ないくらい大変な経験をして……今も…」
そこまで言って口を噤む。
なんで君が泣きそうな悲しい顔をするの…?
他人なのに、なんで?
君だって 大変な経験をしてきたじゃないか。
それなのに…人の痛みばっかり気にして……
『優しすぎるよ』
ぽつり、言葉が零れた。
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月瀬(プロフ) - マドレーヌさん» ありがとうございます〜! (2019年10月9日 17時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
マドレーヌ(プロフ) - 一気読みしてしまいました!とてもおもしろいです(^ー^)大変だとは思いますが更新頑張って下さいp(^-^)q応援しています♪ (2019年10月9日 17時) (レス) id: c84dba5333 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月瀬 | 作成日時:2019年9月10日 12時