検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:27,620 hit

白虎ノ思イ ページ11

*

『中島君、どうしたんですか。こんな夜中に』

私が振り向いた先には 白髪を揺らして佇む中島敦君の姿。


「依頼の帰りです、少し長引いて……その、夜野さんは…」

『少し…色々ありまして』

海に涼みに来たんだよ、と言えば 彼の不思議な色彩の瞳は揺れる。

嗚呼、着衣の乱れで分かるのかな。
それとも表情?匂い?雰囲気?


「あ、その…」

『いいです、気付いているのでしょう?』

「はい…」


彼は申し訳なさそうに目を逸らす。
やめてよ、私まで同じ気持ちになるじゃないの。


「だ、大丈夫…ですか?怪我とか…」

『大丈夫大丈夫、擦り傷が少しある程度です。』

「(あ、傷はあるんですね…)」


心の声が聞こえた気がしたけど 無視しよう。


二人の間に沈黙が流れる。
ザァザァと寄せては返す波の音だけが響き、
息の音は夜の静けさに溶けていく。


「その、これは独り言なので…」

『うん』


私は砂浜に腰を下ろした。
サラサラとした白い砂が 菫色のスカァトに付く。
太宰から貰った、私にとって初めての可愛い服。


「僕は元々、区の指定災害猛獣で…家族も居なくて、本当に……生きていても仕方が無かったんです」

でも、と彼は続けた。

「太宰さんが僕を助けてくれた。何も出来なかった僕に色んな事を教えて、光へと導いてくれた。武装探偵社で色んな人と出会って 、色んな敵と戦って……時には、(芥川)と手を組んで………多くの出会いと経験を太宰さんは僕にくれました。」


一旦区切り、私の横に彼が座る。
綺麗な白髪はサラサラと潮風に揺らされ、神秘的だと思った。


「そして、夜野さんとも出会えました。」

『私…?』

「はい。夜野さんは僕と同い年なのに……想像も出来ないくらい大変な経験をして……今も…」


そこまで言って口を噤む。
なんで君が泣きそうな悲しい顔をするの…?
他人なのに、なんで?

君だって 大変な経験をしてきたじゃないか。

それなのに…人の痛みばっかり気にして……


『優しすぎるよ』


ぽつり、言葉が零れた。

溶ケユク思イハ→←夜ノ海ハ暗ク静カ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
82人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

月瀬(プロフ) - マドレーヌさん» ありがとうございます〜! (2019年10月9日 17時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
マドレーヌ(プロフ) - 一気読みしてしまいました!とてもおもしろいです(^ー^)大変だとは思いますが更新頑張って下さいp(^-^)q応援しています♪ (2019年10月9日 17時) (レス) id: c84dba5333 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月瀬 | 作成日時:2019年9月10日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。