▽目ざとくて口うるさいからやっぱおかん ページ8
「どしたん?」
「えっ?」
「調子悪いやろ?」
翌日学校に行ったら、隣の神ちゃんに心配された。
「なんで…?」
「肌の調子がいつもと違う」
「おかん……(泣)」
「よしよし」
頭をつきだして、撫でてもらう。呆れたように笑ってよしよししてくれた。
髪の毛を崩さないように優しくしてくれるのが神ちゃんスタイル。どうせ寝ぐせついてるんだけど。
「ちょっと寝不足で…」
「寝不足ぅ!?」
裏返った神ちゃんの叫びに、教室中の視線が集まる。
なんでもないなんでもない、と手をぶんぶん振ってる神ちゃんを観賞。和むなぁ。
「なにがあったん?」
「なんにも…」
視線を逸らすが、神山おかんはそんなことでは騙されない。
「そういや、昨日はバイトやったっけ?なんかあったん?誰やった?」
「…」
だんまりを貫く。言えない。のんちゃんに迫られてドキドキしてただなんて言えない。
「危ないからはよやめぇって言ってるやろ?もっと時給ええとことかあるやん。もしあれなら…うちに来ても…もにょもにょ」
最後の方はもにょっていて何を言っているか聞こえなかったけれど、こんな説教をされるのは初めてではない。
危ないってことは言われ続けてたけど、昨日初めて実感した。
危険かもしれない。何が危険って、自分が自分でなくなっちゃうような胸の鼓動が、激しく睡眠を妨害してくるってこと。
寝るためのソフレで、睡眠が妨害されたらたまったもんじゃない。
でも、結構気に入ってるんだよな、このバイト。
一生懸命考えようとしたけど、睡魔が襲ってきたので思考を手放す。
「おやすみ」
いつも通り、呆れたようなあったかい声がした。
神ちゃんだけはいつになっても、私の安眠を守ってくれる、そんな気がした。
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作者名:ひめりんご | 作成日時:2020年4月30日 0時