▽なんて言えへんけど ページ22
「って、のんちゃんが…」
「そりゃー大変やなぁ…」
後輩への顔が広いはまちゃんに泣きつきに行った。
二人で空を見て寝転ぶ。
「Aちゃんは、のんちゃんのことどうおもってんの？」
「わかんない…」
かっこいいし、ちょっとめんどいとこもあるけと、優しいし。
素敵な人だとは思ってる。けど、
「なんもそういう対象として思ったことなくて…友達だと思ってたのに、っていう裏切られた気持ちもあるし、逆に申し訳ない気もするし、ドキドキしちゃうとこもあるし…」
「混乱してまうか」
「ホントに…最悪だよね…」
仲良い男の子は何人かいて、それでも私は恋愛とか思ったことなくて。
でも、相手にどうなん？とか聞けるわけないし。
「私、寝てばっかでなんにも…なんっにも知らなくて、知らないフリしてて…」
はまちゃんの困惑した気配を感じながらも吐露が止まらない。
「あ、ごめん…」
「謝らんでええよ？」
はまちゃんはごろごろと転がってきて私のことを抱きしめた。
「急がんでええんや。ゆっくりゆっくりな。少しずつ知っていけばええ。分からんことは聞いてみればええ」
「んっ……」
めちゃくちゃ細いと思ってたけど、そのくせしっかりした筋肉の感触がして、ぼっと頬が熱くなる。
「のんちゃんかて、Aちゃんを困らせたいって思ってるわけやないと思うしな？」
「そっか…」
はまちゃんの優しい言葉に導かれるように、はまちゃんの背中におずおずと手を回した。
夏だけど、低めの体温が心地よくて。
「落ち着く…」
「まぁ、ドキドキして欲しいとこはあるけどな笑笑男としては」
ん？と顔を上げると、至近距離にはまちゃんの顔があって、慌てて顔を逸らす。
「なんでもないで、ほら、おやすみ」
「ぁい……」
睡魔の縁で、
「Aちゃんは、素敵な子ぉやから、惚れてる男は思ってるよりいっぱい居るかもな」
そう呟く声が、聞こえた気がした。
「俺もやで、なんて言えへんけど」
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作者名：ひめりんご | 作成日時：2020年4月30日 0時
