▽口が裂けても言えません ページ18
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ポケットのかすかな振動で目を覚ました。
「んー…」
半開きの目でスマホを取り出し、ぼやける視界で開くと。
「ぎゃっ」
「は！？」
びっくりして転げ落ちた。
―――しげの肩から。
「え、私しげにもたれてたの？」
「ぉ、ぉん…っていうかそれはどうでもよくて、いやどうでもよくはないんやけど…てか、そのバカ大声はどうしたん」
「いや、神ちゃんからめっちゃ着信入ってたんだよ」
ちらっとLINEを見せると、しげがすんごい顔してた。
「過保護やなぁ…」
とりあえず折り返すために一度電車を降りた。
一度降りたっていうか、ここ学校兼家の最寄だけど。
ついちゃったじゃんね。
けど、眠気が取れないので好物のシュークリームを食べる。
「A。」
「わっ、神ちゃん！？」
「なんでここがわかったん？」
制服のまま息を切らす神ちゃん。
「いや、最寄やし」
「たしかにー」
神ちゃんはつかつかと歩み寄ってきた。
「A？」
「え、なに…？」
「すっきりした？」
「ん？」
神ちゃんはくしゃっと顔をゆがめた。
「Aちゃん、いくら寝てても寝坊しても、授業さぼることはなかったらほんっま心配したんやで！」
「な…ごめ…」
今まで神ちゃんが私に大声を出したことがなかったから、本気で申し訳なくなった。
「いや、ごめん神ちゃん、俺が唆したんよ」
「ちゃうんよ。怒ってるんやなくて、心配したって言っとるの。……Aが隣に折らんと寂しいんやで？」
「寂しいの？」
「恥ずかしいから連呼するなや」
こほんと神ちゃんは咳払い。
「まーでも、しげと一緒にいたんならええんやけど。最近変やったから、なんか悩み事でもあるんかなと思ってたし。ちょっとはすっきりした？」
「んー…まぁ」
どうだろ。
しげにすらドキドキするようになってしまった。から、
かえって悩みが増えたかもしれない。
なんて、しげがいてもいなくても口が裂けたとしても言えません。
悩みって言っても、大した悩みではないんだけどな。
私にとっては、なかなか大した懸案事項なんです。
あーもう、寝て忘れよ。
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作者名：ひめりんご | 作成日時：2020年4月30日 0時
