29. ページ29
.
Tomohiro side
思わず、名前を叫んだ。
けど、全く返事がなくて恥ずかしいと思う前に、終わったなと絶望が俺を襲った。
後悔して、歯を食いしばった。
それと同時に、めまいがして、
立ってられなくなって、その場に座り込む。
情けない。
なんか…死にたくなった。
その瞬間、
当然近づいてきた、足音。
そして俺に飛びついてくる、シャンプーの香り。
正直、怖かった。
もし、ストレッチャーとか来てたなら、
俺、避けようにも避けられへんかったから。
「……A、？」
もう一度呼んだら、肩のところで、
こくっ、と擦れる、髪の毛。
A。
Aに抱きしめられている。
「……A、俺な、？」
もう、すれ違い、勘違いはやめよう。
そう思って、気持ちをすべてぶつけた。
…こんな俺でも、
そばにいさせてくれますか？
目の前におるAは、
真っ白なシルエットでしかなかった。
程よい長さの髪も、ぱっちりな二重も、
綺麗な鼻も、かわいい唇も、
今や、全く見えへん。
けど、わかった。
Aが、涙を流してるのは。
「……っほんまに、？」
Aが、俺を見つめて、そう言う。
「…ほんま、に。」
どういう意図の質問なのかわからなくて、
ぎこちなく返事をした。
そしたら、Aは、
ほんまのほんま！？ うそやない！？、って。
俺、どんだけ信用されてないんよ。
「…ほんまのほんま。
俺、Aおらな、きっと死ぬ。笑」
精一杯の笑顔でそう言ってみた。
口には炎症から痛みがまだ残る。
すると、Aも同じように、
にこっ、と笑顔を見せてくれた。
「…んふふっ、もちろんっ、」
見えない。
けど、わかる。
オーラっていうんかな。
なんか、感じるものがあった。
「……ありがと、」
嬉しくて、嬉しくて、
今度は、俺から抱きしめた。
小さな頭を、肩ぐらいに引き寄せて、
ふわふわと、髪を撫でる。
痛みとか、
なんでも吹っ飛んでまうんちゃうかなって勢い。
とてつもなく、幸せだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1829人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りぃな - とても感動しました。涙、鼻水、止まりません…。この作品に出逢えて良かったです (2020年11月21日 0時) (
レス) id: fbf75e46eb (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - はじめまして！コメント失礼いたします。このお話、すごくだいすきです！前までafterのタイトルで、少し続編書かれてたと思うのですが…！ぜひ期待してますので更新お願いいたします！長々とすみませんでした。 (2020年5月2日 16時) (レス) id: 3d1bfe0662 (このIDを非表示/違反報告)
恋夏 - すごく感動しました。涙が止まりませんよ(泣) (2018年7月22日 10時) (レス) id: bda6d95fa7 (このIDを非表示/違反報告)
みたらん(プロフ) - すごく感動してしまって泣きました笑ほんとにこの作品は感動作品で最高です！ (2017年10月16日 3時) (レス) id: 150b2b8868 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - めっちゃ泣きました！神ちゃんの気持ちがわかっていくうちに、目が涙目になってそれからめっちゃ泣きました！(２回目) 感動しました！ (2017年8月28日 18時) (レス) id: a28a43843b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茉都香
x他1人 | 作成日時：2016年8月4日 16時
