通訳さん

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Daiki side









『…もし俺が、健聴者やったら、
その悩み、教えてくれた？』









やばい。









言ってもうた。









わざと笑顔で、

明るいふりしてるAを見てるのが辛くて、









つい、思わず。









しつこい男や。









大丈夫大丈夫、って言うてんのに、

教えろ教えろ、って。









しかも、









耳のことを気にしてるのなんて、

俺、らしくない。









聞こえてないのが普通やから、

特に不便に思ったことないのに。









なんか、いろいろと自分がいつもじゃない。









『…なんでそんなこと言うの？』









かなり戸惑った様子で、そう尋ねてくる、A。









そりゃ、そうやんな。









戸惑うし、何ゆうてんこいつ、ってなるよな。









なんで？、に対する気持ちはいっぱいあるけど、









どこか言葉が、うまくまとまらない。









一生懸命考えようとすると、

無意識に頭を掻いてしまう。









『…手話は、』









…Aにとっては、労力やろ？









そしたら、また、なんで？、って、

そんなん思ってると思ってんの？、って。









だって、そうやん。









Aは、聞こえるし、話せるんやから。









『…もし、俺が聞こえてたら、
手話なんか無駄な労力、いらんかったやん。』









言葉で気軽に悩みとか言い合えて…って、

え、ちょっと、笑ってる？









待って、俺、真剣やねんけど。









『…悩みを教えて、とか言うたくせに、
わからんから、手話使えとか、矛盾してるし。』









…話せたら、もっと気軽に言ってもらえたんかな、
って、考えたらきりないし。









『…とにかく、今、人生で一番、
音が聞こえないことを、悔やんでる、』









…もし聞こえてたら、話せたら、









『…Aのこと、もっと守れたのに、って。』





























そこまで、気持ちのまま言って、









気づいた。









あれ、俺、何言ってんのやろ、って。









守れたのに？









無意識に、下心が出てもうてた。









Aは、目を大きく開いて、

かなりびっくりしてる様子。









アカン。









やばい、恥ずかしい。









そのせいで、耳が熱い。









なんの機能もしない、









ただ顔についてるだけの、耳が。





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