『センセイ。』【幸村精市】 (ページ4)

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そんな心ちゃんの声も気にせずに、お兄さんは言った。

「母さんから聞いたよ。いつも心と遊んでくれてありがとう」

フフ、と微笑むお兄さん。やっぱり綺麗だ。
2人とも、お母さん似、なのかな。あ、でもお兄さんはちょっとお父さんっぽい？

私は少し照れながら、

『い、いえ、私もお世話になってるので…』

と返した。
そんな私の様子に、またフフフ、と笑ったと思うと、「立ち話も何だし、中入りなよ」と。
正直、お兄さんが帰ってきたと知った今、私にお邪魔するつもりは無い。久しぶりに帰ってきたお兄さんとのひと時を大切にして欲しいし、何より、家族水入らずの食卓を邪魔したくない。

邪魔したくないのに……

そう思っていたのは私だけのようで、心ちゃんの「いいって！上がって！！」の言葉により、私は撃沈した。

心ちゃんは顔を覗かせたと思うと、すぐに階段を上がり、2階に消えた。多分着替えだ。
トホホ、と、もうどうにもならない現状に涙を流していると、それを見透かしたようにお兄さんが言う。

「フフ、迷惑だなんて思わなくていいよ。俺は心の学校での様子を聞きたいしね」

「リビングに行こうか」そう言うお兄さんの言葉に、私は抗う術を知らなかった。

リビングに入ると、さっきまで漂っていた美味しそうな香りが一層強くなる。

「いらっしゃい、Aちゃん」
『お邪魔します、経子さん。大事な日にすみません…』
「フフ、いいのよ！どうせ心が食べるって聞かなかったんでしょう？」

そう微笑まれる。
あ、お兄さんと笑い方一緒だな……。
なんだかこの一家は絵になる。……スケッチブック、まだページ余ってたよね…
家に帰ってからの楽しみも出来た。来てよかったかもしれない。

それに、今日は身市さんは居ないようだ。経子さん曰く、
「昨日急に出張入っちゃってね」
らしい。

『経子さん、手伝いますよ』

そう言おうとしたら、私服に着替えてきた心ちゃんの声に遮られ、最後まで発することができなかった。

「お姉ちゃん！ゲームしようよ！！お兄ちゃんも！」
「え、」

突然の誘いに少し戸惑ったお兄さんだが、経子さんに「フフ、2人とも、心と遊んでて？」と言われ、3人でテレビゲームをして遊ぶことにした。

私たち3人に1人のCPを交え、計4人でパーティーゲームをすることになった。