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「今まで何処にいたの」
「神奈川だよ。沖縄まではいかないけど、海が綺麗なんだ」
「ふーん」
素直に、素直になれ、自分
あの日の事、謝りたいって言ったじゃん
目の前に広がる大きな青。
波の音と潮風の匂い、生暖かい空気
私はソーちゃんを連れ去ったこの海が憎い
でも、ソーちゃんがいつか帰って来るかもしれないと期待してしまうから。
海に足を運んではその緩い塩水に押し返される。
怖くて憎くて堪らないけれど、
海はどうしても嫌いになれない
海岸に流れ着いた流木に二人で腰掛けると、気まずい空気が流れる。
そんな空気から逃れる様に、先に口を開いたのは私の方からだった。
「怪我だらけ…此処に来たのは向こうの不良から逃れる為とか?」
チラッと視線を送った先に見えるのは、顔や腕の節々から見えたガーゼや湿布。
所々青くなった皮膚から視線を逸らす様に再び海を見た。
「ははっ確かに喧嘩はしてるけど…コレはちょっと事故っただけ」
何処がちょっとだ
確か昔から此奴は顔付きのせいと生意気な態度改まって喧嘩に巻き込まれてた気がする
彼と話していると、そんな昔の記憶が沸々と蘇ってくる
「…そう」
「うん」
「…」
この沈黙が私には堪らないほど気まずかった
何を考えているのかわからないその表情。
そんな成長した彼の顔からはソーちゃんを彷彿させた。
なんで私なんかと話したいのとか、今まで何してたのかとか、聞きたい事はいっぱいあったけれども、まず私が聞きたかったのは
「バスケ」
「え?」
「まだバスケ、やってるの?」
ソーちゃんがバスケをやっていたから、リョータも真似して始めたんだっけ
二人を繋ぐバスケット
まだ君はやってるのかなって
「うんやってるよ。
バスケ、続けてる」
「そっか…」
切っても切り離せないその繋がりを、君はまだ続けていた
私にとってはバスケは呪いでも、彼にとってバスケはソーちゃんと自分を繋ぐ唯一だったのかもしれない。
よかった
リョータは不器用ながらにも賢明に前に進んでる。
私だけだ、あそこに取り残されたのは。
「凄いな、リョータは」
「えっ」
「本当凄いよ。尊敬する」
私だけだ
まだ前に進めていないのは
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真夏(プロフ) - 感動しました…。 (7月17日 0時) (レス) @page15 id: f5667fec85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちふれれれ | 作成日時:2023年5月20日 14時