６ ・ 篤人 ページ6
「ウッシー！！お疲れ！！」
篤人「おー。」
試合の後、メンバーがドイツ語で声をかけてきた。
笑顔で返す。
「今日、飲みに行かねーか？」
篤人「いや、今日はゆっくり休むから。」
「そっかー。またな！」
篤人「おー。」
去っていく友人に手を振りながら、着替えがある、ロッカールームへ行く。
汗と水でグチャグチャになったユニフォームを早く、脱ぎたかった。
ロッカーを開け、体に張り付いているユニフォームを苦労して脱ぐ。
ロッカールームには、誰もいない。
おもむろに、カバンの中から地下鉄の定期が入ったケースを取り出す。普段は自家用車で、地下鉄は使わないのだが、これは俺のお守りみたいなもの。
パカッと開く。
そこには、定期と、一枚の写真が挟んであった。
写真には、ユニフォーム姿の俺と、弾けるような笑みを浮かべているあいつがいる。
これは、いつの時の写真だったっけ。確か、高校３年の、最後の試合か・・・。
あいつの笑顔を見るだけで、何度俺の心は救われた事か。
あいつとの思い出の数々に、笑ってしまう。
篤人「なあ、俺達って、ほんとに別れた方が良かったわけ？」
＜さあ、どうでしょう(笑)＞
そんな声が聞こえてきそうだ。
篤人「ね、今何してんの？」
愛おしそうに、そっ、と彼女の顔を撫でてみる。
もしかしたら、彼女も夢を叶え、もしかしたら、世界中をネタ探しに走り回っているかもしんない。
もしかしたら、新しい男を見つけ、もしかしたら、幸せに家庭を作ってんのかもしんない。
俺は、こんなとこで何やってんだろう。
まだ過去のことを引きずっても、いいことなど、何も無い。
でも、
会いたい。
彼女はあの頃より、綺麗になっているだろうか。
彼女はあの頃と同じで、笑顔を浮かべているだろうか。
−もう一回、もう一回でいいから、一目見たい。−
こんな、意気地無しな俺の気持ちは、彼女に伝わるわけがない。
静かに、ケースをカバンの中に滑り込ませた。
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まどちね(プロフ) - ありがとうございます（泣） 絶対、読者様が満足してもらえるよう、頑張ります！ (2014年7月2日 7時) (
レス) id: 1241e6d3a9 (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - 面白かったです。中学生なんてびっくり。文章力がすごいですね。引き込まれました。これからも楽しみにしています。よかったらくっつく所までは続けていただけたら幸せです（●＾o＾●） (2014年7月1日 17時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
まどちね(プロフ) - ありがとうございます！！ (2014年7月1日 1時) (レス) id: 1241e6d3a9 (このIDを非表示/違反報告)
サムライ - 良いです！この話ヤバいです！面白いです！ (2014年6月30日 18時) (レス) id: 839df3a6dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどちね | 作成日時：2014年6月29日 0時
