宝物を守る日々

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Ayuki side









「…うわぁ、！」









そこから母が帰ってきて一緒に入った、

父が総指揮を務めるコンサートは、





本当にすごくて賑やかで、









そして何よりも、かっこよかった。









「すごいね、お母さん…」

「ん？ なに？ なんか言った？」









心臓を突き破るぐらい響く音に、

さっき上から覗いた時よりもはるかに煌びやかな照明。





どの曲もほとんど知らなかった僕でも、

その世界観だけで、かなり興奮した。





すると、同じ区画の少し前の方に見えた、彼女の姿。





時折見えた、笑顔あふれる横顔に、

楽しさが十二分伝わってきた。









「亜幸？ どうしたの？ ちょっと酔った？」









そのまま約2時間のコンサートは終了。





すごく短かった印象とともに、

なぜか終わった瞬間は、よく覚えてない。





呆然としてしまってて、母にそう言われたのが、

はっきりした初めの記憶だっだと思う。









「えっ…あぁ、大丈夫。」









そんな僕に、それならよかった、

とホッとしたような顔をした母。





そして、荷物をまとめ始めたかと思えば、









「じゃあ、帰ろっか？」









その場の余韻なんか気にせず、さらっとそう僕に告げた。









「…え、？」









だから僕は、もう帰っちゃうの？、と思ったけど、





思い返せばそれよりも、

もっと帰りたくない理由があることに気がつく。









「…もう会えないのかな、」









彼女のこと。





さよなら、も言わずにこのまま、

もう2度と会えないのなら、





それは絶対、一生の後悔になるに違いない。









「あれっ、」









そう思って、ふとさっき座ってた彼女の席を見る。





だが、そのにはもう彼女の姿はない。









「ちょっと行ってくる、」

「え？ どこに？」

「出口で待ってて！ すぐ行くから！」









咄嗟に上の方まで上がって、1番近い扉を出た。





すると、そこは、どこかで見たことのある長い廊下。





さっき彼女と探検した時に、

一度通った廊下であることに気づくには、

そんなに時間を要しなかった。









「じゃあ…こっちか、！」









彼女が帰るなら、

きっと流星さんを待ってから帰るに違いない。





僕は、ひたすら楽屋に向かってた。





きっとコンサートを終えて一息ついた、

何人もの人の邪魔をしながら。





ただただ、必死だった。





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